住友化学とJFEエンジニアリング、CO2回収実証試験の開始
2025年8月、住友化学株式会社とJFEエンジニアリング株式会社が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提供する「グリーンイノベーション基金事業」に基づく新たなプロジェクトを発表しました。このプロジェクトでは、独自の膜技術を用いてCO2を分離・回収する実証試験を共同で行うことが決定しました。
実証試験の位置づけ
実証試験は、川崎市環境局が管理するごみ焼却処理施設である「川崎市浮島処理センター」にて、2026年3月から開始される予定です。ごみ焼却処理施設の排ガスからCO2を膜分離法で回収する試みは、国内初となります。カーボンニュートラル社会の実現が急務となる中、発電設備や産業設備の排気ガスからCO2を効率的に分離する技術の必要性が高まっています。
技術開発の背景と目的
住友化学は、2022年5月からNEDOの支援を受けて、低圧・低濃度のCO2分離回収に向けた技術開発を進めてきました。特に、株式会社OOYOO(ウーユー)と提携し、分離膜を利用した低コスト化技術の開発に取り組んでいます。これまでの成果として、実機サイズの分離膜エレメント製造や、複数エレメントを組み合わせたモジュールの製作に成功しました。
一方、JFEエンジニアリングは、ごみ焼却処理施設の設計や建設に豊富な実績を持っています。これまでに200以上のごみ焼却処理施設を手掛け、エネルギープラントから社会インフラに至るまで幅広い分野で活動してきました。
このような強力な連携のもとで実施される実証試験は、住友化学が開発したCO2分離膜を利用し、効率的にCO2を回収するシステムを提供します。具体的には、燃焼排ガス中の10%以下の低濃度CO2を低エネルギーで分離回収できるプロセスが確立される見込みです。
役割分担と期待される成果
実証試験において、住友化学は分離膜を用いた膜モジュールの組み立てや、分離プロセスの基礎設計を担当します。JFEエンジニアリングは、CO2分離回収システムの詳細設計及び、試験設備の設計・運用を主導します。この新しい試験設備は、川崎市浮島処理センターに導入され、運転が開始される予定です。
住友化学の辻純平常務執行役員は、2050年に向けたカーボンニュートラル社会実現に向け、広範な分野でCO2を分離・回収する技術の実装が重要であると述べています。さらに、JFEエンジニアリングの保延和義常務執行役員は、ごみ焼却処理施設に新たな付加価値を加えるため、既存技術との融合を図っていく意欲を示しています。
まとめ
今後の実証試験を通じて、住友化学とJFEエンジニアリングは、日本国内において低圧・低濃度のCO2回収技術を先駆けて実現する初の試みとなります。この取り組みが、カーボンニュートラル社会の実現に寄与することは間違いありません。両社の連携が生み出す新たな技術に、期待がかかります。