堺打刃物とIT技術
2021-08-24 14:00:05
堺打刃物の伝統工芸、IT技術で鍛冶師の技術を定量化する挑戦
堺打刃物とIT技術
堺打刃物は、日本の伝統的工芸品として知られ、特にその鍛冶技術は職人技の結晶です。しかし、近年、優れた鍛冶師の減少が懸念されています。堺の伝統を持続可能にするため、株式会社高橋楠はプロジェクトを立ち上げ、IT技術を駆使して鍛冶技術の定量化に挑戦しています。
鍛冶技術習得の難しさ
堺打刃物の生産は、鍛冶、刃付け、柄付けという分業制で成り立っています。その中でも、鍛冶は習得に最も時間がかかる工程です。一般的に、鍛冶師として独り立ちするには10年以上の修練が必要とされています。さらに、特に夏の炎天下では火と向き合う精神力も求められ、多くの若手が途中で辞めてしまう現状があります。このままでは、2030年代には堺市の鍛冶師はわずか5人ほどにまで減少すると予測されています。
技術の定量化に向けた挑戦
このような危機感から、株式会社高橋楠は鍛冶工程の中でも特に難易度が高いとされる熱処理工程の定量化に取り組み始めました。具体的には、株式会社堀場製作所の非接触型放射温度計IT-480Fを使用し、NECソリューションイノベータと協力して温度測定を行いました。
2021年6月と7月の2回にわたり、鍛造・焼きなまし・焼入れの各工程で温度測定を実施しました。鍛造では、鋼材の鍛接や炉に戻す際の温度帯を観測し、焼きなましではその瞬間の温度を、焼入れでは水に浸す前の温度帯を測定しました。
伝統工芸士との協力
このプロジェクトには、堺市で著名な鍛冶師であり、伝統工芸士の田中義一氏が協力してくれました。彼の熱処理のデータを記録することで、未来の若手鍛冶師にとっての指標を提供し、田中氏の包丁が世界中の愛好家に支持される理由を探る手掛かりを得ることができました。
未来に向けた約束
株式会社高橋楠は、職人の減少を食い止め、堺打刃物を持続可能な産業として維持するため、代表が掲げた4つの約束を果たすことを目指しています。特に、匠の技に対する科学的アプローチを重視し、今回の取り組みがその第一歩です。今後はさらに定量化を進め、属人的な工程をIT技術で見える化し、生産力を向上させる計画です。
隠された温度の秘密
なお、具体的な温度数値については、機密情報であるため公開できないことをご了承ください。しかし、IT技術の導入により、堺打刃物の伝統を守り、次世代へと繋げるための試みは確実に進行しています。今後も高橋楠の活動に注目が集まります。これまでの経験と技術を大切にしながら、伝統と現代技術の融合を図り、多くの人々に愛される製品作りを続けていくことでしょう。
会社情報
- 会社名
-
株式会社高橋楠
- 住所
- 大阪府堺市堺区熊野町東1-1-3
- 電話番号
-
072-238-6565