「組織行動科学®」による物語の構築
最近、全国の企業で見受けられる静かな課題に注目が集まっています。この課題は、会議や研修で盛り上がった意見が現場に活かされず、行動が結果に結びつかないという問題です。また、部門間の情報共有や共働も、単なる形骸化した会議にとどまることが多く、実際の成果にはつながっていません。
このような現象は、意志やモチベーションの欠如によるものではありません。根本的な理由は、行動を持続可能にする「構造」が十分に整っていないからなのです。リクエスト株式会社(東京・新宿区)では、この課題を克服するため、「組織行動科学®」理論体系を発表しました。この理論は、同社がこれまでに蓄積した延べ33万8,000人・980社の行動データをもとに構築されました。
組織行動科学®の基本理念とは
組織行動科学®の核心は、人間の行動がどのように発生し、どのように持続されるのかを解明することにあります。具体的には、行動制御理論、動機/報酬理論、関係構築理論、認知/思考理論、習慣形成理論の5つの領域で整理されています。この理論体系は、誰が実行しても再現可能な“行動の設計図”として機能します。
特に重視されているのは、心理的リワード(心の報酬)です。これは物質的な報酬ではなく、達成感や貢献感、他者からの承認、成長実感といった内面的な満足感を指します。これらの感覚が連鎖することで、行動が持続可能な文化として根づくことが明らかにされています。
社会的背景とその影響
最近、多くの企業では会議での意見が現場で具体化されないことが頻繁に見受けられます。研修で身に着けたスキルも、数か月後には元の状態に戻ることが一般的です。この背景には、組織内の行動を自然に継続できる構造が不足しているという現実があります。変化に適応し進化するためには、経験を経て事実を抽出し、その背景に潜む構造を理解するプロセスが必要です。
しかし、多くの組織は効率化を優先するあまり、具体的な体験からの学びや評価の段階を省略しています。その結果、制度への依存が強まり、変化に対して消極的な文化が生まれています。そのため、持続可能な変化を生み出すためには、新たなアプローチが求められています。
組織行動科学®の特徴
リクエスト株式会社の理論体系は、以下の特徴を持っています。
1.
実証モデルに基づく設計:33.8万人・980社の行動データを基にした統計解析やテキストマイニングを活用し、行動の持続条件を科学的に明らかにしました。
2.
多面的アプローチ:5つの理論領域が統合され、特定の業種や文化に依存せず再現性が高い点が特徴です。
3.
心理的リワードの重要性:行動を持続させる内面的な報酬の循環が強調され、組織の自律性向上を促進します。
4.
生成AIとの連携モデル:AIが行動の各フェーズで問いかけを行い、人間の行動変化を促進します。
5.
二重の行動循環モデル:短期と長期の価値観進化が同時に進められ、組織と個人の持続的な進化が実現されます。
未来へ向けてのビジョン
リクエスト株式会社は、「行動」を見える化し、それを促進するための構造的な仕組みを整備し、全国の現場に向けて広がる組織文化を実現したいと考えています。これは“あの人だからできた”という特別な状況をなくし、環境さえ整えば誰でも活動できる場を創造することを目指しているのです。
「組織行動科学®」は、企業文化を進化させる新たな道を示すものとなるでしょう。これからの日本企業における生産性向上や組織の持続可能な発展を促すために、より多くの企業がこの理論を取り入れることを期待しています。