日本睡眠学会第49回定期学術集会の発表内容
2025年6月28日から29日にかけて、広島大学で開催された「日本睡眠学会第49回定期学術集会」において、株式会社ブレインスリープとスタンフォード大学生体リズム研究所が共同で実施した、通勤や在宅勤務が睡眠および日中の生産性に与える影響に関する研究結果が発表されました。今回の研究は、全国の有職者10,000人を対象に実施された大規模なオンライン調査に基づいています。
研究の背景と目的
近年、労働環境の変化や通勤形態の多様化が進んでおり、特に新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が普及しました。しかし、このような働き方が私たちの睡眠や生産性にどのような影響を与えているのか、具体的なデータは不足していました。そこで、本研究では、睡眠の質や生産性に与える影響を明らかにし、企業や個人がより良い働き方を実現するための指針を提供することを目的としました。
調査概要
本調査は2025年1月に行われ、対象は20代から60代の男女の有職者です。調査方法としてはオンラインパネルを利用し、層別に抽出された10,000名を対象に実施しました。調査内容には、睡眠時間や睡眠の質スコア、日中の眠気スコア、生産性スコア、通勤時間、通勤手段、在宅勤務の回数などが含まれています。
研究結果
1. 通勤時間と睡眠・生産性の関係
調査結果によれば、通勤時間が1分延びるごとに睡眠の量だけでなく質や日中の状態に影響を及ぼすことがわかりました。日本はOECDの中でも通勤時間が長い国であり、これが睡眠不足や生産性の低下を引き起こす可能性が示唆されています。特に通勤時間が長いことで、睡眠の質が低下する傾向が見られました。
2. 通勤手段の影響
通勤手段について調査した結果、電車やバスを利用する人は、車や自転車など他の手段を利用する人よりも睡眠時間が短い一方で、睡眠の質が良好であるとのことです。これは、通勤中に仮眠を取ることができるため、睡眠の質が生産性に好影響を与える可能性があることを示唆しています。一方で、車通勤が多い地域ではその逆の傾向が見られることもあるため、通勤手段の選択が重要です。
3. 在宅勤務の頻度
在宅勤務については、週に数回の在宅勤務が睡眠時間を長くする一方、睡眠の質が低下し、日中の眠気が強くなるという結果が出ました。通勤がないことで睡眠時間が増えるものの、オフィス勤務との違いからメリハリがなくなり、結果として生産性が低下する傾向があると考えられます。
まとめ
今回の研究は、通勤と在宅勤務の影響を明らかにし、企業や個人が働き方を見直すきっかけになることを目指しています。睡眠の質を高めるためには、適切な通勤手段の選択や在宅勤務の頻度の調整が必要です。今後は、さらに詳細なデータを基にした研究が求められます。
日本睡眠学会第49回定期学術集会の詳細
- - 会期: 2025年6月28日~29日
- - 会場: 広島大学霞キャンパス
- - テーマ: 総合科学としての睡眠
- - 公式ホームページ
この研究成果は、私たちの生活や働き方にリアルな影響を与える可能性がある重要な情報です。今後も睡眠に関連する研究の進展に注目していきたいと思います。