3歳までに決まる!口腔内細菌叢の形成過程と生涯の口腔健康
ライオン株式会社と公益財団法人ライオン歯科衛生研究所は、長年に渡りお口の健康に関する研究を実施しています。その中で、乳幼児期の口腔細菌叢の形成過程に関する大規模な縦断研究の結果が、国際的な歯科研究誌『Journal of Dental Research』に掲載されました。この研究は、生後間もない時期から5歳までの子供たちとその両親を対象に、口腔内の細菌叢の推移を詳細に分析したものです。
研究概要:3歳までがカギ
この研究の驚くべき発見は、大人の口腔内細菌叢に似た状態になる重要な時期が、生後6ヶ月から1歳半であること、そして、口腔細菌叢の基盤が3歳までにほぼ完成することです。具体的には、大人の口腔細菌叢を構成する主要な細菌の約8割が1歳半までに、約9割が3歳までに検出されました。5歳時点では、子供と大人の細菌叢の類似度は、大人同士の差よりも小さくなったことも確認されています。
研究方法:綿密なデータ収集
研究では、2015年から2017年にかけて生まれた54人の子供たちとその両親を対象に、13回にわたる唾液サンプルを採取しました。次世代シークエンサーを用いて、細菌の遺伝子配列を解析することで、口腔細菌叢の経時的な変化を詳細に調べました。
重要な発見:1歳半までのケアが重要
研究結果から、1歳半までに、う蝕や歯周病の予防に繋がる可能性のある硝酸還元細菌なども含む、多様な細菌が口腔内に定着することがわかりました。このことは、乳幼児期、特に1歳半までの口腔ケアが、生涯にわたる口腔の健康に極めて重要であることを示唆しています。
今後の展望:予防歯科の新たな視点
ライオン株式会社は、この研究成果を基に、口腔細菌叢を考慮した新たな予防法の開発を進めています。口腔を起点とした健康増進への貢献を目指し、オーラルヘルス領域における研究開発を継続していくとしています。
まとめ:早期からのケアで健康な口腔環境を
今回の研究は、3歳までの口腔細菌叢の形成が、生涯にわたる口腔の健康に大きな影響を与えることを明確に示しました。特に1歳半までの時期は、口腔細菌叢の形成が急速に進み、その後の口腔状態を大きく左右する重要な時期です。早期からの適切な口腔ケアが、健康な歯と口内環境を育むために不可欠と言えるでしょう。 両親は、子供の歯磨き習慣を早期から確立し、歯科医院での定期検診を励行することで、子供の口腔内細菌叢を健康的に育むことができるでしょう。
論文情報
タイトル:Oral microbiota development in the first 60 months: A longitudinal study
著者:Kazuma Yama, Seiji Morishima, Kota Tsutsumi, Ryutaro Jo, Yuto Aita, Takuya Inokuchi, Takuma Okuda, Daisuke Watai, Kanta Ohara, Masato Maruyama, Takashi Chikazawa, Taku Iwamoto, Yasushi Kakizawa, Takayuki Oniki
* 掲載雑誌名:Journal of Dental Research(Sage Publications Ltd)