自治体における人材育成と政策形成力調査の結果とは
一般社団法人日本能率協会が実施した「第2回政策形成力・人材育成に関する調査」について、詳しく見ていきます。この調査は、全国の自治体人事部門を対象に行われ、256の自治体が回答を寄せました。調査は2024年12月から2025年3月にかけて行われ、自治体の政策管理や人事管理の実態を探るべく、前回2016年に行われた調査と比較しています。
調査概要
調査には、全国の1788の都道府県や市区町村の人事部門が含まれており、郵送によるExcel調査法で行われました。回答率は14.5%と、一定の回答を得ています。本調査は、地方自治体が直面する財政問題や、人材育成における新たな課題を浮き彫りにする目的も持っています。
財政悪化と歳出適正化の進展の遅れ
調査結果によると、半数以上の自治体が今後の財政悪化を懸念しており、しかしながら歳出の適正化は進んでいないとのこと。全体の60%が改革に進展がないと回答し、実施の鍵が「首長のリーダーシップ」や決断にかかっていることが明らかになりました。この点が制度実行の成否を分ける大きな要因であることが示されています。
特に、厳しい財政状況を言いながら毎年の予算編成が行われている点が、実際には財政の危機を鈍化させる要因となっているとの指摘もありました。
IT活用力の重要性の高まり
さらに、地方自治体職員に求められる能力として、「IT活用力」が特に重要視されていることが分かりました。前回調査からの比較で、必要性が大幅に高まっており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れと相まって、この能力の向上が急務とされています。実際、IT活用力は不足度で2位、重要度で1位と、いずれも上位を占めています。
心身の健康管理が最大の経営課題
次に、組織や人事管理においては職員の心身の健康管理が最も大きな課題として浮上しました。この問題は特に小規模自治体で顕著であり、過重労働や人材不足が大きな影響を与えています。
各種制度の導入状況
政策管理や人事管理の各種制度の導入状況も確認されており、導入率は向上していますが、一方で制度の機能度には改善の余地があることも示されています。制度設計だけでなく、その運用の重要性も強調されている点が興味深いです。
まとめ
今回の調査からは、自治体が抱える財政の課題と人材育成力の乏しさが見えてきます。首長のリーダーシップが求められる中、職員は主体的な行動をとれるように求められています。また、各制度の見直しや健全化への取り組みが急務であり、組織全体での改革が必要とされています。持続可能な行政経営に向けた政策形成力の向上や戦略的な構造改革が今後の大きな課題となるでしょう。