Scalarと58株式会社がAI駆動開発の新たな枠組みを提供

近年、AI技術の進化に伴い、ソフトウェア開発におけるプロセスが大きく変化しています。特に、株式会社Scalarと58株式会社が手を組み、エンタープライズ分野におけるAI駆動開発の課題を解決するための協業を始めたことは注目に値します。この協業により、Scalarの提供する「ScalarDB」と58の「dodoAI」が連携し、要件定義から運用までをシームレスに行うことが可能となります。

AI駆動開発の課題

生成AIの登場により、開発現場ではAIを活用した開発が進行していますが、エンタープライズシステムの開発においては次の２つの重要な課題が浮上しています。

1. 開発プロセスの統合不足
各工程でAIツールを使用しても、要件定義から運用までが個別に行われ、統合がなされていません。AIが生成したコードのレビューも難しく、設計やコードとの紐付けが不明瞭なため、結果として本番品質に達しない場合が多いのです。

2. AIの限界とマイクロサービス化によるデータ整合性の複雑化
大規模なシステムでは、マイクロサービスを導入する必要があり、それに伴うデータ整合性の管理が複雑になっています。AIがコントロールできるデータ量には限りがあるため、効率的な実装が求められますが、現状のAIではこれを適切に働かせることが難しいとの声が上がっています。

協業による新しい取り組み

Scalarと58は連携により、これらの課題に対する統合的な解決策を提供します。具体的には、dodoAIを通じて開発プロセス全体を管理し、ScalarDBを利用してマイクロサービスのデータ整合性を確保するフレームワークを構築します。

- dodoAIによるプロセス統合

dodoAIは要件定義から設計、ソースコードまでを管理します。これによりシステム開発の生産性が向上し、ライフサイクルが短縮します。特に、ナレッジシステムを利用して要件、設計、コードを連携させることで、変更の影響を瞬時に把握できるようになります。

- ScalarDBによるデータ整合性の確保

ScalarDBは、異なるデータベースを統合することに長けており、分散トランザクション管理機能を持ち合わせています。これを利用することで、複雑な実装を自動的に処理し、AIによる開発の質を向上させることが可能です。また、データ暗号化やアクセス制御機能によりセキュリティ面でも安心です。

連携の効果

この連携は、dodoAIがScalarDBの機能を理解し、コードを生成することで相乗効果を発揮します。マイクロサービスアーキテクチャの中で、AIが実装できなかった複雑なトランザクション処理を自動的に組み込み、全体としての品質向上を図ります。最終的には、言い換えれば「個別最適」から「全体最適」へのシフトを実現し、大規模なエンタープライズシステムでのAI駆動開発が行えるようになるのです。

今後の展望

今後、両社はこの新しいフレームワークを様々な業界に展開していく予定です。特に金融、製造、通信など、システム開発において特に大規模な対応が求められる分野において、DXの推進を図ります。なお、AI駆動開発に関する共同研究を進め、開発現場での実践的事例を集めたセミナーも2025年に開催することが決まっています。このセミナーでは、AIを活用したシステム開発の生産性や品質を兼ね備えた手法が発表される予定です。