シリアの記憶を未来に。文化を守るための3Dアーカイブ
東京大学大学院の渡邉英徳研究室とNPO法人Piece of Syriaが進める「シリア・アーカイブ」プロジェクトは、長引くシリアの内戦によって失われつつある文化や記憶を3Dデータとして保存し、未来に手渡そうとする試みです。このプロジェクトは、シリアの街並みや文化遺産を記録することにより、復興の基盤を築くことを目指しています。
文化を未来へ手渡す意義
近年、シリアでは歴史的建造物や地域社会が多くの戦争によって破壊されてきました。その結果、街の文化、伝統、そして日常生活が消えつつあります。特に、難民や避難民として故郷を離れる人々が増加する中で、彼らの文化やアイデンティティの記憶が薄れてしまうことが懸念されています。そこで、このアーカイブの意義は大きく三つに分かれます。
1.
文化遺産の保護
戦争において、敵対者の侵略を意図するために文化や歴史的資産が意図的に破壊されることがあります。そうした状況下で、文化を保存することは平和のメッセージとなります。
2.
文化の断絶防止
現在、シリアの国民の半数以上が避難生活を余儀なくされ、伝統文化や行事に触れる機会が減少しています。これにより、文化の継承が難しくなり、断絶が進んでいます。
3.
未来の復興に向けた精神的土台
シリアの文化や伝統を知らずに育つ次世代に対し、故郷の文化を知る機会を提供することで、将来の復興に向けたアイデンティティの確立を支えることができます。
多様な協力者による3Dデータの作成
本プロジェクトでは、シリア国内外の協力者が参加し、様々な視点からシリアの文化を保存するデータを作成しています。映像作品の撮影を行ったのは、Piece of Syriaの代表である中野氏です。また、現地ネットワークを通じたシリア人の考古学者や観光ガイド、アーティスト、NGOの関係者など、多様な人材から素材を集めています。これらの素材は、広島や長崎、東日本大震災、ガザ地域の戦争や災害の記録を行ってきた渡邉英徳研究室の技術を活用し、デジタル空間に記録されます。
分断を乗り越えるプロジェクトとしての展望
Piece of Syria代表の中野氏は、「私たちは、トルコに逃れたシリア人の子どもたちへの教育を提供してきました。多くの子どもたちが故郷を知らない現状に危惧を感じています。文化を継承することで分断を超えた対話を生み出し、共通の価値観に基づく未来をつくりたいと考えています」と語ります。
4月26日、イベントに参加しよう
このプロジェクトを多くの人に知ってもらうため、2026年4月26日に東京で「シリア3Dアーカイブ」を用いたワークショップが開催されます。シリアの文化を理解し、未来に向けた対話を行う機会となるでしょう。参加費は無料なので、関心のある方はぜひ参加してください。
取材・お問い合わせ
プロジェクトに関心がある方は、東京大学大学院の渡邉英徳研究室またはPiece of Syriaへお問い合わせください。シリアの文化と記憶を未来へとつなぐこの取り組みに参加し、一緒に考えましょう。