賃上げ圧力に悩む企業の現状と初任給引き上げの動き

近年、日本の企業は「春闘」による賃上げ圧力に直面しています。特に2025年の春闘では、多くの大企業が賃上げを実施し、賃上げ率が5%を超える高水準に達しました。この背景には物価の上昇と人手不足の影響があり、企業の経営層は賃上げの必要性を否応なしに強く感じるようになっています。しかし、全ての企業がこの流れに追従できるわけではありません、特に中小企業においては、賃上げが経営を圧迫する要因となっています。

春闘の影響

エデンレッドジャパンが実施した調査によれば、7割以上の企業が「春闘による賃上げ圧力」を感じており、そのうち約9割が自社の賃上げ率に悪影響を及ぼしていると回答しています。このように、春闘が企業の賃金体系に与える影響は大きく、企業の判断を後押ししています。

賃上げ疲れの実態

一方で、賃上げの継続に対する負担感、「賃上げ疲れ」を感じている企業は約8割にも達します。主な影響としては「企業収益の圧迫」が68.7%と最も多く、続いて「事業への投資抑制」が33.1%を占めました。これは、賃上げが単に賃金の上昇に留まらず、企業の成長戦略にも影響を与えていることを示しています。特に中小企業は、人件費と投資のバランスを取ることが難しく、成長投資を後回しにする事例も増えている状況です。

初任給引き上げの流れ

このような環境下でも、驚くべきことに初任給を引き上げる企業が増加しています。調査結果では、賃上げ疲れを感じる企業の80%が初任給を引き上げたと回答し、その理由としては「応募確保・辞退防止」が79.6%を占めました。特に大企業では86.1%が初任給を上げており、中小企業でも73.8%に到達しています。このことは、企業が人材確保を急務と考えている証拠です。このように、賃上げ疲れがあっても、企業は新卒採用競争を意識して給与戦略を柔軟に見直しています。

賃上げへの対策

賃上げの影響を受けている企業は、経営の圧迫をどう管理するかが課題となっています。調査によると、最も一般的な対策は「コスト削減の徹底」であり、これに取り組む企業は47.2%に上りました。また、「生産性向上に向けた取り組み」や「雇用の見直し」を行う企業も増加しています。これにより、正規雇用から非正規雇用への移行が見られる動きもあり、賃上げの影響が人材戦略全体に波及していることがわかります。

今後の賃上げ見通し

2026年度における賃上げの見込みについて聞くと、大企業の約7割が「継続できる」と回答しましたが、中小企業ではその半数に止まりました。このことから、賃上げの持続性における大企業と中小企業の間に明確な温度差があることが検証されました。人材確保が難しい中小企業にとって、賃金を基準にした定着策の構築が急務とされます。

結論

株式会社エデンレッドジャパンの代表取締役である天野総太郎氏は、賃上げの継続は多くの企業にとって挑戦であると語っています。同時に、企業が緊急の人材確保のために初任給を引き上げる動きが増加している点は注目すべきです。一企業が採用戦略を見直す中で、給与以外の非金銭的側面も考慮することが今後の人材戦略の鍵となるでしょう。また、企業は賃上げに伴う経営負担の軽減策として、柔軟な働き方や福利厚生の見直しに着手する必要があります。