夏木マリ、ブルーノート東京で魅せた心に響くライブの裏側

俳優として広く知られる夏木マリが、音楽活動においても自身の原点を語る一夜となったのは、2025年3月21・22日にブルーノート東京で行われたライブでした。このライブは、夏木の表現者としての人生が凝縮され、心に響く瞬間の連続でした。

22日の午後7時、聴衆が期待に胸を膨らませる中、夏木はジャズの殿堂、ブルーノート東京の舞台に立ちます。彼女が選んだオープニングの曲は、1973年リリースのヒット曲「絹の靴下」。黒とベージュの落ち着いた衣装で登場した彼女がハスキーボイスで歌い上げると、一瞬で会場がブルージーな雰囲気に包まれました。

続いて披露されたのは、2023年発表の新曲「TOKYO JUNK BOOGIE」。新型コロナの影響で音楽がもたらす楽しさを再確認した夏木が放つこの楽曲は、バンド全体を一気にトップギアに引き上げます。そのパフォーマンスには、確かな張りと陰影、絶妙な抑揚があり、同じリズムでも毎回異なる世界観が広がりました。

また、2024年に上演された舞台「千と千尋の神隠し」にまつわるエピソードを交えたMCでは観客を笑わせた後、雰囲気を一変。昨年亡くなった国民的詩人、谷川俊太郎へのオマージュとして歌ったのは、武満徹の名曲「死んだ男の残したものは」。彼女の歌声はその存在感で心に響く音楽を生み出し、さらに「鎮静剤」やビートルズの「イエスタデイ」なども続き、心を掴むパフォーマンスが展開されました。

このブルーノート公演は7回目を迎え、恒例の企画として定着したのは、ピチカート・ファイヴの小西康陽による楽曲がきっかけです。夏木は小西が描く独特な世界観を気に入り、今回のライブでも小西の楽曲を連続して披露しました。エキセントリックなキャラクターたちが描かれた歌の数々は、夏木の声によって「人生賛歌」として新たな命を吹き込まれます。そして、ただのブルースではない、さまざまな物語が巧みに描かれました。

最後は、ジャニス・ジョプリンの「Cry Baby」と「60 Blues」で締めくくり。これらの楽曲は、夏木自身の人生を語るものであり、聴くたびに違った印象を受けます。これは彼女が常に進化しながら、自らの人生を形作り続けている証拠です。

アンコールでは、緑色のドレスに着替えて登場。ワインを片手に楽しむ彼女の姿と、バンドメンバーとの会話は、観客にとっても印象的な瞬間でした。「次はいつ会えるかしら？今日の皆さん最高！」と声をかける彼女の笑顔は、夏木マリが多くの人々に愛される理由を再確認させるものでした。

この夜、彼女の表現者としての人生がどれほど多くの人々に感動を与え続けているかを実感することができました。今後も彼女の活躍に期待したいところです。