中村鶴松がシネマ歌舞伎20周年を祝う
2023年、歌舞伎俳優・中村鶴松はシネマ歌舞伎20周年記念イベントに登壇し、特別な舞台挨拶を行いました。この上映会では『野田版 鼠小僧』が取り上げられ、鶴松は当時の思い出や感謝の気持ちを語り、多くの観客を魅了しました。
『野田版 鼠小僧』の背景
『野田版 鼠小僧』は、演出家・野田秀樹と歌舞伎俳優・十八世中村勘三郎によるコラボレーションで大きな話題を呼びました。2005年に公開されたこの作品は、シネマ歌舞伎の第一弾として新しい形の歌舞伎を広めるきっかけとなりました。20年の歳月を経て、2025シーズンに向けて全国34館で再上映されることになりました。
中村鶴松は、本作において重要な役を演じる子役として出演しており、この経験が彼の演技人生に大きな影響を与えたと語ります。彼が歌舞伎俳優としての道を歩み始めるきっかけとなった作品であり、その思い出を描くことで、当時の感情がいかに深いものであったかが伝わってきます。
鶴松の懐かしい思い出
舞台挨拶で観客の前に立った鶴松は、「今月30歳を迎えたばかりの“おじさん太”でございます」と、当時の役名である“孫さん太”を引き合いに挨拶し、会場は笑いに包まれました。彼は勘三郎との思い出も語り、特に「カーテンコールで抱きかかえてもらった瞬間が忘れられない」と述べました。このような心温まるエピソードは、彼のキャリアにおける節目を感じさせます。
さらに、勘三郎からの言葉で特に心に残っているものとして「芝居が良ければ、細かいことは問題ではない」という教えを紹介しました。勘三郎との共演が鶴松にどれほどの影響を与えたのかが感じられ、彼の成長を思わせます。
兄たちとのユーモア
鶴松は、勘九郎と七之助からしばしば言われる言葉も紹介しました。「お前は鼠小僧の時が一番良かった」との言葉には、けん制のような親しみが感じられ、彼らの仲の良さを伺わせます。また、鶴松自身も「今は仕返しをされる立場です」と冗談を交じえて話し、会場を和ませました。
今後の展望
20周年を迎えたシネマ歌舞伎に対しては、鶴松は古典作品の重要性を改めて強調しました。細かな演出が見えにくい部分も、映画を通じてしっかりと表現できる可能性があると提案し、未来への希望を語りました。
最終的に彼は「この舞台が人生のターニングポイントとなりました。観客の皆様に感謝申し上げます。これからも中村屋を応援してください」と観客に感謝の意を示しました。この言葉からは、彼のこれまでの歩みと未来への決意が表れています。
2015年に続いて行われるこの上映会は、ただの映像の再現ではなく、鶴松の人生に深い意味を持つものであることが感じられました。多くの人々が足を運び、彼の成長を見守る姿勢が印象的でした。