高齢者住宅の評価指標開発に見る社会参加と幸福感の関連性
近年、高齢者の生活環境の質を向上させるための取り組みが求められています。特に、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)については、その環境や提供されるサービスの質を評価するための指標が必要とされています。千葉大学予防医学センターの研究グループが行ったこの評価指標の開発において、社会参加とコミュニケーションが健康やウェルビーイングにどのように関連しているのかを探りました。
1. 研究の背景
高齢化が進展する日本において、高齢者が自立して生活できる住環境の整備は不可欠です。世界保健機関(WHO)では、「高齢者にやさしい都市・コミュニティ」という概念を提唱し、その中でも「住宅」が重要な要素とされています。サ高住は日本で制度化され、年々増加しているため、その品質向上を図る評価指標の開発は急務です。これまで、サ高住の生活環境やサービス内容についての系統的な評価を行う研究は少なく、その必要性が指摘されてきました。
2. 研究成果の概要
今回の研究では、39のサ高住施設からのデータを基に、生活環境を多角的に評価する「サ高住評価指標」を開発しました。分析の結果、月に1回以上の社会参加や、10人以上の友人との交流・家族外のコミュニケーションが重要な指標として浮かび上がりました。このほか、住宅環境の質、情緒的サポートの受領、趣味を持つことなども、評価において重要な役割を果たすことが示されました。
特に注目すべきは、評価の結果、14項目の指標が健康指標や幸福感指標と有意な関連を持つことが分かったことです。研究チームは、改善が期待できる施設やサービスの質が入居者の健康やウェルビーイングに与える影響を明らかにするため、施設レベルだけでなく、入居者個別のデータも考慮して分析しました。この双方向からの検討が、実践に即した新たな評価モデルの確立へとつながるのです。
3. 未来への展望
今回の研究成果は、日本初の試みとして、サ高住の品質向上に寄与する評価モデルの展望を提示しました。今後の研究においては、より多くの施設を対象に追跡調査を行い、因果関係の解明を進める必要があります。また、物理的環境や安全性などを考慮した包括的な評価指標へと発展させることが求められます。これにより、行政や住宅事業者が質の高いサービスを提供するための支援が促進され、最終的には入居者の満足度と生活の質の向上が期待されるでしょう。
参考文献
本研究は、千葉大学と積水ハウスとの共同プロジェクトに基づき実施されています。具体的な研究結果は、2026年2月26日発行の『日本公衆衛生雑誌』にて明らかにされる予定です。