日本ゼオン、次世代リチウムイオン電池向け導電ペーストへの投資合意
日本ゼオン株式会社(東京都千代田区)が、台湾のSino Applied Technology Co., Ltd.(SiAT社)に対して基本合意のもと、2,000万米ドル規模の資金を投入することを発表しました。これは、SiAT社が開発している次世代リチウムイオン電池用の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を活用した導電ペーストの製造能力拡大を目的としています。
リチウムイオン電池の需要急増
近年、リチウムイオン電池の需要は急速に伸びており、特に電気自動車やドローン、さらにはeVTOL(電動垂直離着陸機)などの民生用途に加えて、AIサーバーのBBU、自動化ロボティクス、再生可能エネルギーシステム(ESS)などの産業用途でも需要が増しています。このような中、SWCNTはエネルギー密度を高め、電池のサイクル寿命を延ばすための重要な材料として注目されています。
ゼオンの技術力
ゼオンは、2015年に世界初のスーパーグロース技術を使ってSWCNTの量産に成功し、特に「高純度」「高比表面積」「高アスペクト比」の三つを特長とする製品「ZEONANO®」を開発しました。一方、SiAT社は、20年以上にわたる電池用ナノ材料の開発経験を持ち、SWCNTを安定した導電ペーストに加工する独自の技術を有します。
新しい導電ペーストの展望
SiAT社は、2024年以降にZEONANO®を用いた導電ペーストの開発を続け、電池メーカーからのサンプル評価において、リチウムイオン電池の正極と負極に微量添加することでエネルギー出力やサイクル寿命を向上させる結果を確認しています。この導電ペーストは特に、シリコン負極や高容量・高出力性能を求められる次世代電池に活用される期待が高まっています。
SiAT社の目標
SiAT社は、今回調達した資金で2030年までに導電ペーストの生産能力を年間25,000トンに拡大する計画を進めています。ゼオンもSiAT社の主要サプライヤーの一つとして、日本国内でのSWCNT粉体の生産を拡充し、CNT事業の市場開拓に全力を尽くす方針です。
SiAT社の基本情報
- - 社名: Sino Applied Technology Co., Ltd.
- - 事業内容: CNT導電ペースト、LMFPペースト、CNTコートアルミ箔、ナノシリコン負極などの製造・販売
- - 代表者: Langley Chen
- - 住所: 台灣桃園市中壢區東園路33號、320023
この新しい投資によって、次世代リチウムイオン電池市場での競争力が一層強化されることが期待されています。