未来に向けた水生生物の保全
福岡工業大学の社会環境学部に属する乾隆帝教授は、持続可能な水生生物の保全と共存をテーマに鋭意研究を行っています。その功績が評価され、令和7年度「みどりの日」に環境大臣賞を受賞しました。この受賞は教授の研究が持つ社会的な意義を物語っています。
研究の中心テーマ
乾教授は、海や河川の生態系を守るために、さまざまな研究手法を取り入れています。特に、「環境DNA分析」と呼ばれる新しい技術や、ドローンで撮影した画像をAIで解析する手法に注目しています。これらは、生態系の評価や生物の生息状況を把握するために大きな役割を果たしています。
「環境DNA分析」とは?
環境DNA分析は、水中に含まれる生物のフンや皮膚の破片などをサンプルとして取り扱い、そのDNAをデータベースと照合することで、特定の生物がその場所に存在しているかどうかを調べる手法です。これにより、直接観察やサンプリングを行わずとも生物の生息の有無を知ることができ、特に絶滅危惧種の追跡にも有用です。
海洋温暖化の影響
現在、日本近海では海水温が上昇しており、特に玄界灘の水温上昇率は世界平均の約2倍と言われています。この温暖化が海洋生態系に与える影響について、乾教授は環境DNA分析を用いて研究を進めています。特に、玄界灘では南方系の魚類が冬季でも生存し、定着するケースが増えてきています。実際に、乾教授の研究によって、30種類以上の亜熱帯性魚類が確認されており、彼らの生態が変化しつつあることが明らかになっています。
新たなモニタリング技術
環境DNA分析が普及している一方で、開放的な水域での少数かつ移動性の高い魚を検出することは難しいとされています。そのため、教授は新しいサンプリング手法として乾燥海綿を用いたモニタリング方法を開発中です。これにより、より高精度で魚類の生息状況を把握しようとしています。
ドローンを活用した生息実態調査
さらに、教授はドローンを活用した生息実態調査の方法も探求しています。干潟の重要性を理解するためには、効率的な調査手法が不可欠です。干潟は多様な水生生物の生息場であり、環境の浄化にも寄与しています。しかし、近年の埋め立てや工事により、その面積は急速に減少しています。乾教授の研究が進むことで、干潟の保全や再生に向けた新たな手法が期待されています。
教授の今後の展望
乾教授は、水生生物の研究者として全国各地でフィールドワークを行い、最新技術を用いて水圏環境の評価を続けていく意向を示しています。彼の研究は、環境問題に対する深い理解と、持続可能な社会を実現するための指針を提供してくれるでしょう。今後の研究成果に目が離せません。