極端気象分析の新たな拠点、WACが日本で始動

2025年5月20日、新たな気象分析の拠点となる「極端気象アトリビューションセンター（WAC）」が発足しました。このセンターは、日本における極端な気象現象に対する迅速な分析と情報発信を目指し、人間活動による温暖化や自然変動の影響を精密に定量化することを目的としています。WACは東京大学大気海洋研究所や京都大学防災研究所など、気象研究の権威たちが参加する独立したブランドです。

WACの発足背景

発表会では、気候変動の影響が日常生活にどのように影響を及ぼしているか、市民の直面する問題として理解を促進することが重要であると、登壇者たちが強調しました。東京大学准教授の今田由紀子氏は、「2024年には世界の年平均気温が産業革命前と比較して+1.5℃を超える見込みで、地球温暖化対策は喫緊の課題です。しかし、これがどのように私たちの生活に影響するかを理解するのは難しい」と述べ、WACの設立意義を説明しました。

迅速な分析と情報発信

これまで異常気象の科学的分析には1〜2ヶ月を要していましたが、WACでは発生から数日以内に結論を出し、迅速に結果を社会へ発信します。WAC独自の統計手法により、従来必要だった大量のシミュレーションデータを利用できるため、科学的な信頼性を保持しつつも、その速度感は圧倒的です。

初年度は気温の異常イベントを中心に取り組む予定で、豪雨や台風についても準備が整い次第、分析対象に加える計画とのことです。さらに、中長期的には自動化を見越した進展も予定されており、江守正多教授との共同研究も進められる点が注目されています。

トークセッションの様子

発表会の後半では、気象予報士たちによるトークセッションが行われました。司会を務めた井田寛子氏が、気象情報を分かりやすく伝える重要性について話す中で、視聴者に「おかしな天気」と警鐘を鳴らす場面が見受けられました。気象予報士としての今村涼子氏は、「視聴者に温暖化をどう伝えるか、興味を引くことが課題」と語り、地域に根ざした情報提供の重要性を強調しました。

一方、南利幸氏は、「単にデータを羅列するのではなく、身近な事例を挙げて親しみやすくすることが必要」と指摘しました。石榑亜紀子氏も「身近な話題を通じて気候変動を解説することができる」として、日常の中での温暖化の影響を感じてほしいと伝えました。

最後には、川瀬宏明氏が「異常気象はもはや例外でなくなってきている」と警告し、WACの活動がメディアとの連携を通じてさらに強化されることに期待を寄せました。

期待される社会的影響

WACの発足は、異常気象と気候変動に対する認識を一新させるポテンシャルを秘めています。科学的なアプローチを用いることで、私たちの生活に直結する課題についての理解を深め、行動を促すことが期待されます。気象研究と報道の連携が進むことで、より身近に感じられる気候変動の情報が提供され、私たちの生活がどう変わるのかを今後注目していきたいところです。