高校野球の新たな潮流、「成長至上主義」が提案する未来
昨今の高校野球の現場では、勝利そのものが目的化されている状況が見受けられます。しかし、本書『成長至上主義のチームデザイン──成長こそが慶應の野球』では、この現状を打破するための具体的な提案がなされています。本書の著者、森林貴彦監督は、勝敗にとらわれることなく、選手一人ひとりの成長を重視する新たな視点から高校野球をとらえ直します。
勝利至上主義の限界
高校野球は社会の注目を集める一方で、「勝つこと」に執着する余り、選手たちの成長の機会を犠牲にしてしまうことが多いのです。従来の指導方針では、選手の成長が置き去りにされがちで、組織の在り方もゆがんでしまう可能性があります。勝利を目指すことは重要ですが、そこにすべてをかけるのではなく、選手の未来を見据えたバランスの取れたアプローチが求められています。
成長を重視した新たな枠組み
本書が提唱する「成長至上主義」は、勝利を否定するものではありません。むしろ、勝利と個人の成長を車の両輪のように捉えることで、いかに両方を実現していくかが焦点となります。具体的には、練習設計や役割分担、ケガ予防などを含めたチーム運営を“成長”を中心に再考し、選手ひとりひとりがその後の人生に生かせるようなスキルを磨くことを重要視しています。
この視点を持つことで、結果だけに固執するのではなく、選手が学業や将来のキャリア、人間関係においても成長できる循環を生み出すことができます。
成長志向のチームデザイン
本書では、慶應義塾高校野球部を支える専門家たちの知見も紹介されています。メンタルコーチ、スポーツサイエンティスト、スポーツドクターが一体となって、選手の現状に対して最適なサポートを提供します。
- - メンタルコーチ 吉岡眞司氏:選手が逆境に立たされた際に、心を強く保つためのトレーニングを指導し、選手のセルフコントロールを助けます。
- - スポーツサイエンティスト 稲見崇孝氏:科学的な知見を基に、フィジカルトレーニングを通じて選手の身体を最適化します。
- - スポーツドクター 米川正悟氏:チーム状況や大会日程に配慮し、選手の健康を最優先に考えたメディカルケアを提供します。
このように、多方面から支援が行われることで、選手は多様なスキルを身につけ、自身の成長を実感できます。また、高校卒業後の長い人生を見据え、選手たちがどのように成長していくかを問い直す機会が創出されます。
結論
スポーツにおける勝ち負けは一つの指標であるものの、人生において本当に重要なのは、選手自身がどれだけ成長できるかということです。本書は、まさにそのメッセージを訴えています。勝利を求めるだけではなく、互いに支え合いながら成長していく環境を築くことが、未来の高校野球にとって不可欠であると言えるでしょう。