大阪ガスが進める定置用蓄電池技術
大阪ガス株式会社は、2023年の新たな取り組みとして、定置用蓄電池向けの画期的な劣化診断および寿命予測技術を開発しました。この技術は、大阪ガスの完全子会社である株式会社KRIの技術を利用しており、電力系統に沿った蓄電池の運用の最適化を目指しています。
技術開発の背景
近年、持続可能なエネルギー源として再生可能エネルギー(再エネ)の導入が進んでいますが、それに伴い、電力の出力変動を抑えるための蓄電池の必要性が高まっています。大阪ガスは2023年2月に系統用蓄電池事業に参入することを決定し、現在は国内で3か所の蓄電池関連プロジェクトを推進しています。
しかし、蓄電池はその性質上、劣化が進むと急速に性能が落ちるリスクがあり、それが運用に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、大型の定置用蓄電池においては、長期間安全に使用するための運用技術の革新が求められています。これまでのKRIの蓄電池評価の知見をもとに、大阪ガスとKRIは共同で研究を進め、劣化診断および寿命予測システムを構築しました。
新技術の概要
新しい技術では、運用中の電圧や電流、温度といったモニタリングデータを活用し、蓄電池の劣化状態を診断することができます。さらに、運用パターンに基づいて将来の劣化を予測する能力も兼備しています。このアプローチは物理現象に基づいた理論モデルと実データを組み合わせることによって、従来のデータのみの予測手法に劣らない精度と広がりを持っています。この結果、蓄電池の長期運用が期待される結果を生むことが可能になります。
未来への展望
今後、大阪ガスはこの技術を段階的に自社の蓄電池事業に適用し、実用化に向けた詳細設計を進めていく計画です。また、大阪ガスが長年培ってきた電力トレーディングのノウハウを活用し、蓄電池の長寿命化と安全性、電力市場での取引経済性の両立を目指したシステム構築に向けた取り組みを強化していきます。
また、Daigasグループ全体では、再エネ併設型の蓄電池についても検討を進め、国内におけるトップクラスの蓄電池運用事業者となることを目指しています。2025年には「エネルギートランジション2050」に基づき、脱炭素社会への貢献を目指し、さまざまな技術やサービスの開発に取り組んでいく所存です。
結論
大阪ガスが新たに開発した劣化診断と寿命予測の技術は、再エネ導入の進展とともに、持続的なエネルギー供給の確保に寄与すると期待されています。未来に向けて安全で長期的な蓄電池の運用を実現するこの取り組みは、エネルギー業界における新たな地平を切り開くかもしれません。