中央競技団体の現状と課題
公益財団法人笹川スポーツ財団(SSF)が2024年度に実施した「中央競技団体現況調査」の結果が発表され、スポーツ界における最新の動向が明らかになりました。
調査の背景と目的
SSFは、2010年度より2年ごとに中央競技団体の状況を把握するための調査を行っており、本調査は2024年11月から12月にかけて実施されました。調査の目的は役職員数や人材動向、中長期的な経営戦略などを把握し、スポーツ団体の運営改善に寄与することです。
女性役員の進展と経営基盤の整備
調査によると、「女性役員の存在しない団体」はわずか3.6%にまで減少しました。これは、2010年度の44.3%から大幅な改善が見られています。さらに、83団体のうち72.3%が中長期基本計画を策定しており、経営基盤が着実に整備されつつありますが、依然として課題も存在しています。
人材不足の深刻な現状
調査の結果では、正規雇用者が「不足している」と回答した団体が38.6%、「やや不足している」と答えた団体が33.7%で、全体の70%以上が人手不足を抱える状況にあります。また、人材育成に関する問題として、「育成にかける時間の不足」が76.0%と最も高い割合を示しており、育成に必要なリソースが不足していることも浮き彫りになりました。
採用と労務環境の取り組み
人材確保のためにテレワークの導入や在職者の労働条件改善が進んでいる一方で、採用に積極的な団体は約30%と、採用意欲があっても実際に求める人材を確保するのは容易ではありません。労務環境の改善には、賃金の引き上げや勤務条件の整備が急務とされています。
収支状況の分析
収入と支出の調査結果によれば、71団体の総収入は761億2,500万円に対し、総支出は789億6,100万円で、支出超過となっていることが確認されました。特に人件費の割合は全体の10.1%に留まっており、競技運営などの事業費に多くが充てられています。これらの状態は、人的資源の安定した確保や雇用環境の改善が必要であることを示唆しています。
結論と今後の展望
調査結果からは、スポーツ界におけるガバナンスコード遵守の進展が見受けられる一方で、依然として人材不足や育成に関する課題が存在することが分かりました。これらの問題解決には、国や統括団体による支援や施策が期待されます。今後も、競技団体が持続可能な運営を行うための環境整備が求められます。また、さらなる改革が進むことにより、スポーツ界の活性化と人材育成が実現することを願っています。