高齢者の運転免許返納に関する実態調査から見えた実情
弁護士ドットコム株式会社が実施したアンケート調査によると、60歳以上の運転免許保有者の約8割が免許を返納する意向がないことが分かりました。この調査は2024年8月28日から9月3日の間に行われ、1055名の弁護士ドットコムの一般会員が対象です。
調査の概要
調査方法は自社の一般会員に対するアンケートで、返納状況やその理由、そして周囲の家族の意識についても探っています。実際に返納した人はわずか6.2%で、9.0%の人が返納する予定だと答えましたが、返納予定がない人は82.1%に達しました。
返納しない理由は様々
返納しない理由について尋ねたところ、最も多かったのが「運転能力に問題ないと思っているから」で、全体の58%に及びました。この回答には、自信を持つ高齢者の心理が垣間見えます。その他には「代替の移動手段が乏しいから」が32.8%、また「運転や車が好きだから」との回答も31.9%に上っています。
家族の意識はどうか?
また、70歳以上の親や祖父母を持つ回答者に焦点を当てると、約4割が「運転免許を返納させたい」と考えていることが明らかになりました。具体的には、免許を保持している70歳以上の親や祖父母に対し、返納済みの人が22.8%、返納していない人も含めると31.1%に達しました。
家族の意識を更に深掘りすると、約44.1%が免許を持つ親や祖父母に対して返納を希望している一方で、23.0%は返納させるつもりはないと答えています。家族間での免許返納への思いには、大きな温度差が存在することが伺えます。
事故のリスクを懸念
さらに、家族が不安視しているのは、やはり事故のリスクです。70歳以上の親や祖父母が運転を続けている場合の返納希望者の理由として「事故を起こす可能性があるから」が53.6%、また「高齢者の事故を見て怖くなったから」が46%を占めるなど、家族の安全を第一に考えた意見が多く寄せられています。
結論
今回の調査結果から、高齢者の運転免許返納に関する現状と家族の意識には大きな乖離があることが明らかになりました。高齢者自身は運転能力に自信を持っている一方で、家族はそのリスクに敏感です。今後、高齢者の運転免許返納を進めるためには、家族の理解と協力が不可欠であると同時に、高齢者本人の意識改革も必要でしょう。
このような状況を踏まえ、社会全体で高齢者が安心して生活できる環境を整えることが求められています。特に、高齢者向けの交通手段の充実など、公共交通機関や地域社会の支援も重要な課題です。