第34回山本七平賞の最終候補作が決定
株式会社PHP研究所は、京都市に本社を持つ出版社であり、毎年恒例の山本七平賞を主催しています。2024年の第34回山本七平賞の最終候補作が、予備選考を経て発表されました。この賞は、思想家・著述家の山本七平氏の業績を顕彰するもので、1989年の創設から多くの意義ある作品を表彰してきました。
最終候補作の紹介
今回の最終候補作として選ばれた作品は以下の4点です。
- - 『戦う江戸思想』(著:大場一央、ミネルヴァ書房)
- - 『日本経済の死角』(著:河野龍太郎、ちくま新書)
- - 『「みんな」って誰?』(著:宮本匠、世界思想社)
- - 『論理的思考とは何か』(著:渡邉雅子、岩波新書)
『戦う江戸思想』
大場一央著の『戦う江戸思想』は、江戸時代における日本の思想の形成を探求します。本書では、保科正之や徳川光圀といった当時の思想家たちとその人物像を掘り下げつつ、日本のアイデンティティを形作った「物語」についても考察を深めています。著者自身も早稲田大学で教鞭をとるなど、こちらの分野に精通しており、全15章からなる構成で思索が展開されます。
『日本経済の死角』
河野龍太郎の『日本経済の死角』は、長期にわたる日本経済の停滞を掘り下げ、現代社会における課題を鋭く指摘します。失われた30年という時代に、日本の生産性が向上している一方で実質賃金が上昇しない理由に迫り、そのメカニズムを解明。新しい経済分析を提供し、経済の未来への見解を述べています。
『「みんな」って誰?』
宮本匠の『「みんな」って誰?』は、人口減少と高齢化が進む日本における地域の活性化について議論します。災害に遭った地域がどのようにして活力を取り戻すかというテーマに基づき、実践的なガイドを提示。彼の研究は、生活する中で見えにくい側面に光を当て、コミュニティの力を再発見します。
『論理的思考とは何か』
最後に、渡邉雅子の『論理的思考とは何か』では、思考法が固定されたものではないことを強調し、目的に応じた多様な思考法を提案します。この書籍では、日常生活だけでなく、経済や政治における思考のあり方を再評価し、思考技術の重要性を訴えます。
選考委員と受賞発表
選考委員は、著名な学者たちで構成され、伊藤元重(東京大学名誉教授)、中西輝政(京都大学名誉教授)、長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長)、八木秀次(麗澤大学教授)、養老孟司(東京大学名誉教授)らが参加しています。最終選考会は9月12日に実施され、受賞作品が発表されます。
受賞者には300万円の副賞および記念品が贈られることが決まっており、授与式は11月13日に都内で行われる予定です。
まとめ
この山本七平賞は、日本における思考や文化の振興を目的とし、候補作品は毎年多様で意義深いものが選ばれています。提案される視点や考察が、私たちにとって新たな啓発と考え方の展開を促すきっかけとなることを期待しています。