工学院大学が木造建築の新たな保護手法を提案
2025年12月9日から11日にかけて、東京ビッグサイトで開催される第29回R&R建築再生展において、工学院大学の田村雅紀教授が木造建築の退色やひび割れに効果的な高伸張型木材表面透明保護塗り材について発表します。この技術は、コンクリート資源の循環や歴史的建造物の保存再生を目指した研究の一環として進められており、木造建築の耐久性を向上させることを目的としています。
木造建築の重要性
現在、木材の使用は炭素を貯蔵し、二酸化炭素の排出削減に寄与することから、注目を集めています。2010年に施行された法律や2021年の脱炭素社会を視野に入れた法律により、木材の建築利用が推進されています。しかし、耐久性の確保や長寿命化に関しては課題が残されています。
研究の進展
田村教授は、株式会社セブンケミカルとの共同研究を2018年から進めており、近年には長野県や千葉県での木造改修プロジェクトにおいて効果的な塗装方法を実証実験しました。この結果、塗り材の特性や品質に関する情報が設計者や発注者に十分に伝わっていない現状が浮き彫りになっています。
展示会でのアピール
展示会では、屋外の暴露試験体が展示され、塗装表面の状態や劣化防止効果を直接観察できる機会があります。また、田村教授によると、木材表面保護塗り材には多様なタイプがあり、目的に応じた適切な選択が重要です。例えば、自然由来の浸透型や厚みのある造膜型、不燃化を重視したタイプなどがあり、それぞれ異なる特性を持ちます。これにより、屋内外を問わず退色やひび割れを防ぐ効果が期待されます。
学生の成長と技術の社会化
この技術をテーマにした学生の論文は海外の学会でも高く評価され、今後の社会実装を進める意義が深まっています。低炭素社会の実現に向け、設計や施工を手がける企業や発注者に対して、塗り材の特性や施工方法を周知し、インフラ維持・保全に貢献したいという田村教授の願いが込められています。
総評
今回の展示会は、最新の建築技術や環境への配慮が問われる中で、木造建築の重要性を再認識する貴重な機会です。工学院大学の取り組みを通じて、木材の持つ特性が最大限に生かされ、持続可能な社会の実現に向けた一助となることを期待しています。
出展情報
- - 展示会名称: 第29回 R&R 建築再生展2025 マンション改修編
- - 主催: 建築再生展組織委員会
- - 会期: 2025年12月9日(火)、10日(水)、11日(木)
- - 会場: 東京ビッグサイト東8ホール
- - 参加費: 無料(要事前登録)
- - 公式サイト: https://rrshow.jp/2025/
特許情報
- - 発明の名称: 不燃木材、不燃木材の製造方法、及び木材を含む構造物の不燃化方法
- - 発明者: 田村雅紀、内藤真弘、久保田信二、島袋省三、奈良利男
- - 特許権者: 学校法人 工学院大学、株式会社セブンケミカル
- - 特許番号: 特許第7549832号
共同研究機関について
- - 株式会社セブンケミカル: 建築意匠を追求した外壁防水材のパイオニアで、1971年に創業。東京都港区に本社を置く。