清涼飲料業界が挑む物流の未来:2024年問題への共同解決策と持続可能な社会への貢献

日本の産業界が直面する「物流2024年問題」は、特に消費者への商品供給を担う清涼飲料業界にとって喫緊の課題です。こうした中、アサヒ飲料、伊藤園、キリンビバレッジ、コカ・コーラボトラーズジャパン、サントリー食品インターナショナルという国内を代表する大手清涼飲料5社が、昨年11月に「社会課題対応研究会」を正式に発足させました。この異例の連携は、物流問題だけでなく、温室効果ガス排出量削減や食品ロス問題など、広範な社会課題への対応を目指す画期的な取り組みとして注目されています。

物流環境が厳しさを増す中で、各社共通の最優先課題として取り組んできたのが、トラックドライバーの労働環境改善と物流効率化です。特に、長時間の待機やドライバー自身が行う荷役作業は、負担増大とコスト増加に直結していました。研究会は発足前から議論を重ね、物流パートナーやお取引先の協力を得て具体的な改善策を実行。その結果、目覚ましい成果を上げています。2024年3月から2025年2月までの1年間で、ドライバーが1時間以上待機する「待機時間」の件数は平均約40%削減され、ドライバーが行う「荷役作業」の発生件数も平均約30%削減を達成しました。これは業界全体の効率化とドライバーの働きがい向上に大きく貢献する一歩と言えるでしょう。

さらに、持続可能な物流体制を構築するため、同業他社や異業種企業との共同配送や往復輸送といった連携を積極的に強化しています。具体的な取り組みとしては、2024年7月には伊藤園と日清食品が往復輸送を、サントリーグループとダイキン工業も同様の取り組みを開始。2024年8月にはコカ・コーラボトラーズジャパンと伊藤園が共同配送を実施し、同年10月にはコカ・コーラボトラーズジャパンと湖池屋も共同輸送で連携。さらに11月にはアサヒ飲料と伊藤園、サントリーグループとサッポログループ、伊藤園と全農グループがそれぞれ往復輸送を展開しました。そして2025年2月にはキリンビバレッジと花王が共同配送に踏み出すなど、各社の垣根を越えた協業が着実に進んでいます。これらの取り組みは、トラックの積載効率を高め、空荷での走行を減らすことで、物流コスト削減だけでなく、温室効果ガス排出量削減にも貢献します。

本研究会は、個社だけでは解決が難しい社会課題に対し、省庁や他業種の物流研究会とも積極的に情報交換や協議の場を設けるなど、多角的なアプローチで改善を推進しています。今後も、待機時間や荷役作業以外の物流課題の共通認識化と対応策の検討を深める他、飲料容器などの資材面からも社会課題解決に繋がる領域を探索していく方針です。清涼飲料大手5社は、消費者のニーズに応えながらも、環境への配慮を怠らず、社会的責任を果たすべく、持続可能な社会の実現に向けた事業活動を継続していくことを明確にしています。この異色の協調が、日本の物流システムの未来をどのように変革していくのか、その動向に注目が集まります。

会社情報

会社名
サントリー食品インターナショナル株式会社
住所
東京都港区芝浦3-1-1田町ステーションタワーN
電話番号

トピックス(経済)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。