実証実験で目指すのは新しい広告の形
三菱HCキャピタル株式会社、AGC株式会社、さらに株式会社ジェイアール東日本企画の3社が連携し、デジタルサイネージ広告における新規事業開発を目指して、実証実験を行いました。この実験は、広告の効果を検証し、新たな広告プラットフォームの構築を試みるもので、特にオフィスビルの共用部での広告展開という新しい挑戦です。
実証実験の背景
オフィスビル内における広告展開は、対象となる購買力の高いユーザーが集まるにもかかわらず、これまで広告配信が難しかった領域とされてきました。特に化粧室など、限られたスペースでの広告は、一般的な手法では受け入れられにくいとされていました。しかし、今回の実証実験では、こうした場所にデジタルサイネージを導入することで、その可能性を探ります。
実施概要
新丸ビルの26階と30階において、三菱HCキャピタルとAGCの従業員を対象としたこの実証実験は、二つのフェーズで行われます。第一期は2025年1月21日から2月28日、第二期は2025年6月1日から7月31日まで実施される予定です。
第一期では、AGCが提供する「ミラリア®」というディスプレイ一体型ミラーを設置し、広告やニュース、天気情報を配信します。第二期では、さまざまなジャンルの広告(飲料、金融、映画、化粧品など)やエンターテインメントコンテンツが導入され、利用者の反応を測定します。
役割分担
各社の役割は以下の通りです。
- - 三菱HCキャピタル:実証実験のマネジメントと従業員へのアンケート調査を実施し、効果を測定します。
- - AGC:ミラリアの設置、保守、そしてデータ取得を担当します。
- - jeki:配信機器の設置や放映オペレーション、広告主への営業活動を行います。
調査結果
実証実験の結果、第一期と第二期を通じて、就業者の約55%が広告コンテンツを認知していることが明らかになりました。また、広告やニュース、天気に対する印象は90%以上が「普通」「良い」「非常に良い」と評価しました。この結果は、オフィス内という特異な環境での広告放映が受け入れられる可能性を示しています。
メディア接触時間
特に興味深いのは、到達した媒体への接触頻度と接触時間です。実証実験の結果、平均で1日あたり約3.9回媒体に接触し、接触時間は47.8秒と判明しました。これは、就業者が広告媒体と継続的に接触していることを示唆しています。
今後の展望
今回の実証から得られたデータを基に、各社は今後の広告主やオフィスビルオーナーへのマーケティング活動を進め、2026年度中にはオフィス内でのデジタルサイネージ広告サービスを提供する計画です。この新たな取組みが、従来の広告展開のあり方を変えていくことが期待されます。
オープンイノベーションの一環
なお、この実証実験は「Tokyo Marunouchi Innovation Platform (TMIP)」の活動の一環として進められたものであり、大企業とスタートアップ、異なるジャンルの企業が協力することで新しい価値を創出することを目指しています。
まとめ
デジタルサイネージ広告の新しい可能性を探る実証実験は、オフィスビルの共用部という特殊な環境での広告展開の受容性を高める重要なステップです。この取り組みが今後の広告業界に与える影響について、引き続き注目が必要です。