異常気象に打ち勝つための革新技術
2023年4月23日、東京大学で行われた「LUCレクチャー」において、アクプランタ株式会社の金鐘明CEOが「沸騰する地球で農業はできるのか?」をテーマに講演を行った。この講演は、アクプランタが開発した新たな農業資材「スキーポン」と、地球温暖化に対する農業の未来を考える重要な機会となった。
高温と乾燥にさらされる農業
地球の気温が上昇する中で、農業は深刻な影響を受けており、高温障害や乾燥による生産量の激減が問題視されている。特に、森林火災の頻発もその一因であり、持続可能な農業の実現が急務となっている。これまで多くの研究が行われてきたが、気候変動によるスピードに対応できていない現実がある。
エピジェネティクスに基づく新技術
金CEOは、エピジェネティクス研究に基づいた新技術を紹介した。「酢酸を利用した植物の極度高温・乾燥耐性化技術」は、これまでの研究の枠を超えたもので、特に注目を集めている。この技術は、50℃、湿度5%の環境下でも植物の生存率を維持できることから、従来の農業技術に革命をもたらす可能性が期待されている。これにより、通常の半分以下の水量での収穫が可能になるという。この画期的な技術は、すでにアメリカ、ウガンダ、ブラジル、韓国などで導入され、大規模な栽培実証も進められている。
スキーポンの実力
新技術を活用した農業資材「スキーポン」も紹介された。「スキーポン」は、酢酸の作用を利用して植物の高温や乾燥への耐性を高め、収穫量や品質を維持するだけでなく、節水にも寄与する。今回の講演ではこの資材がどのようにして効果を発揮するのか、具体的な例を交えた詳細な説明が行われた。
アクプランタのビジョン
アクプランタ株式会社は、金CEOが2017年に「Nature Plants」に発表した研究からスタートした企業である。気候変動への対応とともに、減農薬や減化学肥料のニーズの高まりに応じて、現在では世界中の14カ国で「スキーポン」の実証実験を行っている。日本においても、様々な農業機関と連携しながら、この技術の可能性を探求している。
成功を収めるアグリスタートアップ
アクプランタは、国内での評価も高く、第6回アグリテックグランプリ最優秀賞やAgriFood SBIRピッチ2023ビジネス構想最優秀賞など、数々の賞を受賞している。これからも農業の未来を変える新たな技術を通じて、地球環境の維持と持続可能な農業を実現する活動を続ける。
このように、金鐘明CEOの講演は、結論として我々が直面する気候変動という危機に対し、希望の光となる新技術の可能性を示すものであった。今後も、農業と環境の接点に位置するテクノロジーが発展することに期待が寄せられている。