再開発する中国人訪日客の消費行動の進化に迫る
コロナ禍を経て、訪日外国人の中で中国人観光客が特に注目を集めています。以前は「爆買い」と称される大量消費がクローズアップされましたが、そのスタイルが変化しつつあるというのが新たなトレンドです。2024年の時点でのデータをもとに、中国人訪日客の消費行動の変化について詳しく見ていきましょう。
01. 消費総額と支出の変化
2019年と2024年の比較によれば、中国人訪日客の一人当たり消費金額は約30%増加し、212,810円から276,604円に達しています。一方で、買い物は依然として最大の支出項目であり続けています。
また、宿泊や飲食、娯楽といった体験型支出も確実に増加してきています。つまり、訪日旅行者は買い物だけでなく、旅行全体での過ごし方に変化が見られるのです。
02. 買い物内容の変化
訪日中国人旅行者が購入した商品のランキングを見てみると、2019年には化粧品・香水が81.9%を占めていたのに対し、2024年には菓子類が75.3%とトップに躍り出ました。一方で、化粧品の購入率は54.0%に減少しています。この背景には、中国国内での化粧品入手のしやすさや現地のローカル企業の増加が影響していると考えられます。
また、中国人訪日客の買い物否定傾向も変化しています。SNSなどを通じて、「日本限定」「地域限定」「季節限定」といった商品の価値が高まっており、特に限定商品が依然として注目を集めています。
03. 買い物場所の変化
買い物を行う場所の変化も顕著です。2019年には「ドラッグストア」が88.7%を占めていたのに対し、2024年には「コンビニ」が85.7%と最も利用される場所となりました。ドラッグストアの利用率は74.7%に減少しています。この現象は、コンビニが手軽に利用できるお土産品や限定商品を取り扱っているため、すぐに手に入れやすいという理由が背景にあると考えられます。
04. 体験型消費の兆し
「モノからコトへ」という流れが言われていますが、最近のデータを見る限り、その単純な観点では捉えきれない現実があります。宿泊費は61.8%も上昇しており、インバウンド需要に伴うホテル価格の上昇が影響していますが、飲食費も35.7%、娯楽サービス費は79.0%増加しているのが特徴です。これらは、旅行者自身が選択した体験に直接つながる支出として注目され、新たな消費ニーズの表れと言えるでしょう。
05. まとめ
全体として、訪日中国人の一人当たり消費額は約30%増加しており、依然として買い物が最大のお金の使い道となっています。しかし、消費の内容は大きく変わってきており、化粧品や医薬品など従来の人気品目は減少。菓子類や地域限定商品といった“日本ならではの品”が好まれるようになりました。
また、宿泊、飲食、娯楽といった体験型消費も増加しており、「楽しみたい」「思い出を持ち帰りたい」という意識も強まっています。今後の訪日中国人客の消費スタイルは、「選び抜いたモノ」と「自らの体験」の両方を重要視する方向に進んでいくことが予想されます。