背景
近年、医療の現場では多様化・複雑化するニーズに応じて、安全性の確保と医師の負担軽減が求められています。その中でも特に重要視されているのが、医療文書に記載される重要な所見の見落としを防ぐための仕組みの構築です。これまでも一部の医療現場では、重要所見を的確に医師に通知するシステムが試みられてきましたが、専門医の負担やキーワードによる判定の限界といった課題が残っていました。
共同実証実験の概要
このような背景を踏まえ、2024年12月から2025年8月にかけて、インテックは岩手医科大学と共同で医療文書における重要所見の見落としを防ぐためのAI技術の有効性を実証する実験を行います。
インテックは2019年に、岩手医科大学に対し医療データの一元化を図るプラットフォームを導入しており、それを活用して進められるこの実証実験では、医療文書の重要所見に関するアラートを医師に通知するシステムの実現を目指します。具体的には、複数のAIを用いて医師が作成した読影レポートに記載された重要所見を的確に判定する技術の妥当性を検証していく予定です。
実験の目的と流れ
この実証実験では、医療文書の重要所見判定手法を様々な読影レポートに適用し、その結果を複数の専門医が評価します。重要なのは、判定手法が本当に妥当であるかどうかを見極めることです。実施する読影レポートは50件を予定しており、これらのデータを通じて誤判定がないかを確認していきます。
検証内容
- - レポート判定結果を評価し、汎化性能を確認します。
- - 重要所見に関連する誤判定が許容できるかどうかを専門医によって評価します。
結果として、重要所見に対する許容できない誤判定が0件であった場合、その手法の妥当性が確認されます。実際に行われた計算結果では、読影レポート50件に対する判定結果の正解率が94%という高い精度を示しています。この実証実験で得られた成果は、今後他の医療文書にも応用可能とされています。
専門家のコメント
岩手医科大学の田中良一教授は、読影レポートの見落としが医療過誤につながるリスクを指摘し、本手法の導入が医師の業務負担を軽減し、業務の安全性向上に寄与することに期待を寄せています。
今後の展開
インテックは、この実証実験を通じて得た知見を基に、医療文書の見落とし防止のためのアラート機能を医療情報連携プラットフォームに組み込む計画です。これにより、診療の質向上や医療の安全づくりに寄与することが期待されています。
医療情報連携プラットフォームについて
インテックの医療情報連携プラットフォームは、電子カルテや部門システムに散在する医療データを統合し、データの利活用を可能にするもので、さまざまな医療機関のニーズに応じた機能開発なども行っています。
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会社概要
インテックは1964年の創業以来、ITに関連する幅広い事業の展開を行っており、AIやRPAなどのデジタル技術の活用にも積極的です。今後も社会の持続可能な発展に寄与すべく、技術革新を進めていきます。