エンビプロとサトーが挑むリチウムイオン電池リサイクルの新時代
静岡県富士宮市に本社を構える株式会社エンビプロ・ホールディングスと、東京港区に本社を置く株式会社サトーが、使用済みリチウムイオン電池(LIB)のリサイクル過程を情報化する実証試験に成功しました。この実績は、近年増加するライフサイクルにおけるリサイクルのニーズや安全性を考慮し、確実かつ効率的に環境問題に対応するものです。
エンビプロとサトーの連携
今回の実証実験は、リチウムやニッケル、コバルトなどの希少金属が含まれるLIBのリサイクル過程において、輸送中の温度変化や処理過程の情報をデジタルに記録するトレーサビリティの確立を目的としています。日本国内のライフスタイルの変化や産業機器の増加に伴い、LIBの廃棄量も増加しており、これに伴うリサイクルの必要性が高まっています。
背景と目的
リチウムイオン電池は日常的に使用される多くの製品で使用されており、この背景には、ますます増加する使用済みLIBの処理という課題があります。特に、ライフサイクル全般にわたる発熱や発火といったリスクが問題視されています。これらを解決する手段として、エンビプロとサトーは協力し、デジタルデータの活用によるトレーサビリティを強化しました。
実証実験の内容
実証実験では、使用済みLIBをRFID温度ロガータグ(LogBiz-Thermo)でモニタリングし、輸送過程やリサイクル工場に至るまで温度や衝撃を継続的に記録しました。収集したデータはクラウドに保存され、エンビプログループが開発中のトレーサビリティ管理システム「TraceView」で可視化されます。これにより、使用済みLIBの回収から再資源化に至るまでの全過程が追跡可能になり、より安全で効率的なリサイクルが実現できるのです。
新たな課題
実証試験を通じて、以下のような課題も浮かび上がりました。
- - 個体識別のID管理など、社会実装のためのルール作りが求められる。
- - 物流における商流の整備が必要な状況。
- - リサイクル現場での業務フローの柔軟性が求められる。これらの課題に取り組むことで、リサイクル業界全体の透明性と効率性が向上することが期待されています。
今後の展望
エンビプロとサトーは、実証実験の成果を基に、LIBのリサイクル情報化をさらなる段階へと進める方針です。将来的には、データを「バッテリーパスポート」と連携させることにより、LIBのライフサイクルの全てにわたる情報一元管理を目指しています。これにより、より持続可能な社会の実現に寄与し、リサイクル資源の生産量予測や資源管理の改善が図られます。
2024年12月4日から6日まで開催される「サーキュラーパートナーシップEXPO 2024」では、これらの研究成果がさらに詳しく紹介される予定です。注目の成果を通じて、リチウムイオン電池リサイクルの新たな道が切り開かれることを期待しています。