久山町研究と皮膚カロテノイド
カゴメ株式会社が開発した『ベジチェック®』を活用して行われた久山町研究が新たな成果を発表しました。この研究では、九州大学を中心とするグループが皮膚カロテノイドのレベルとメタボリックシンドローム(以下、メタボ)との関連性を明らかにしました。具体的に言うと、皮膚カロテノイドレベルが高いほどメタボの該当者が少なくなることが示されています。この研究結果は、2024年7月9日に国際的なジャーナル『International Journal of Obesity』に掲載されました。
久山町研究について
久山町研究は1961年にスタートし、福岡県久山町の住民を対象とした疫学研究です。この研究は九州大学が主体となっており、多数の科学的知見をもたらしてきました。2019年には、40歳以上の住民を対象に行われた健診で、1,743名のうち1,618名が皮膚カロテノイドの測定を希望しました。その結果、506名がメタボに該当することが分かり、皮膚カロテノイドレベルとメタボの関係も分析されています。
皮膚カロテノイドとメタボリスクの相関
この研究から明らかになったことは、皮膚カロテノイドレベルの測定値が高いほどメタボ該当者が少ないという関係性です。具体的には、測定値が約4から7まで上昇するに従って、メタボに該当するリスクが低下することが示されています。この結果は年齢や性別、生活習慣などさまざまな因子を考慮した上でのものです。
著者たちによると、カロテノイドの生理作用に関する過去の研究も参考にしながら、高カロテノイド食が必ずしも直接的にメタボリスクを低下させる訳ではないことを指摘しています。つまり、皮膚カロテノイド値の上昇とメタボリスクの低下は、何らかの生活習慣や環境要因が関係している可能性があるということです。
メタボの要因との関連性
さらに、皮膚カロテノイド値とメタボに関連する要因(腹部肥満、血圧、血糖、コレステロール)との関係も分析されました。この研究では、男女それぞれの皮膚カロテノイド値を基にグループ分けし、各項目との関連性を評価した結果、皮膚カロテノイド値が高いグループでは腹部肥満、血圧、高血糖のリスクがいずれも低いことが確認されました。
ただし、脂質異常との直接的な関係は見られず、これは肥満を介した間接的な関係である可能性があります。引き続き、皮膚カロテノイド値を高める要因やメタボリスクを下げる要因については今後の研究が求められます。
ベジチェック®の役割
カゴメが開発した『ベジチェック®』は、誰でも手軽に自身の推定野菜摂取量を約30秒で確認できる機器です。センサーに手のひらを押し当てるだけで結果が得られ、その簡便さから日常生活に取り入れることが期待されます。
結論
久山町研究の結果は、健康維持に向けた食生活の重要性を改めて考えさせるものであり、今後の研究がさらなる知見を提供することを期待しています。このような研究が進めば、より多くの人々に健康的な生活習慣の確立につながるのではないかと考えられます。