VTuberが目の前に現れる新たなライブ体験
日本のエンターテイメント界に新たな風を吹き込む試みとして、株式会社stuとANYCOLOR株式会社が共同開発したMR(複合現実)ライブシステムが注目を集めています。この技術により、VTuberが実在しているかのように目の前に現れるライブ体験が実現しました。先日、2025年1月8−9日に開催された「ANYCOLOR/にじさんじ 新技術実証実験イベント ver.2025.01」では、このシステムの実証実験が成功裡に行われ、参加者に新しいエンターテイメントの形を楽しんでもらいました。
これまでのVTuberライブの限界
従来のVTuber音楽ライブは、リアルな会場との相互作用が乏しく、音と映像が一体となった体験が難しいものでした。主にLEDモニターを介して視聴されるため、参加者は画面越しの距離を感じてしまうことが多かったのです。しかし、今回のMRライブシステムでは、ヘッドマウントディスプレイやスマートフォンを通じて、観客はリアルタイムにVTuberのパフォーマンスを自分の視点で体験できるようになったのです。
リアルタイムMRライブシステムの概要
この新たなシステムは、VTuberライブ専用の伝送システムとMR合成システムの二つの柱から成り立ちます。両社の綿密なコラボレーションによって、VTuberのモーションや照明演出信号をリアルタイムで観客に届けることが可能になりました。特に、低遅延のデータ伝送技術が鍵を握っており、VTuberや司会者、参加者がスムーズにコミュニケーションできる環境を整えています。
技術の詳細
データ伝送技術
MRライブの実現のためには、キャラクターの動きや演出信号を低遅延で各デバイスへ送信する必要があります。ANYCOLORと共同開発された独自のデータ圧縮技術により、映像の遅延や同期ズレを最小限に抑えることができ、観客はリアルタイムでの臨場感あふれる体験が楽しめます。
映像合成技術
実写とCGの融合には通常のAR/MR技術では難しかった部分を克服しました。新たな映像合成手法を開発し、キャラクターと会場のリアルタイム音と照明を連動させることで、今までにない没入型エンターテイメントが実現しました。
ネットワークインフラの再設計
大量データの安定した伝送には、従来の無線環境では困難でした。そこで、新たに設計されたネットワーク機材が導入され、MRライブに最適な環境を整えました。この取り組みによってオペレーターの負担が軽減され、データの流れがスムーズに。
未来に向けて
このMRライブシステムの開発によって、VTuberはより身近な存在に感じられるようになり、独自の自由度の高いコンテンツが次々と生まれることが期待されます。今後はライブイベントだけに留まらず、ゲームや展示会、テーマパーク、ショッピングモールなどでも活用される見込みです。これにより、国内のキャラクターコンテンツ全体の新たな発展を促すことを目指しています。
イベントの様子
実証実験イベントでは、にじさんじに所属する人気VTuber「加賀美ハヤト」と司会の「百花繚乱」がリアルタイムでのパフォーマンスを披露。参加者はこの新技術の実力を体感し、多くの反響を呼びました。
この革新がエンターテイメントの未来をどのように切り開いていくのか、引き続き注目です。