田中貴金属工業が手掛ける新たな貴金属素材「Visi FineⓇ」
医療現場が求める安全性と精度を兼ね備えた製品を提供するため、田中貴金属工業株式会社が医療機器部材向けに新しい貴金属素材群を発表しました。新シリーズの名前は「Visi FineⓇ」。このブランド名は"見える"と"細かく洗練された素材"を意味する造語で、特にX線不透過性に優れたプラチナ合金からなるワイヤや部材が該当します。この新たなアプローチにより、医療機器用部材の基準が一新されることが期待されています。
現代医療の進化とニーズ
近年、医療の現場では低侵襲・非侵襲的な手術や治療が普及してきました。従来の手術に比べ、患者への負担を大幅に軽減し、回復も早くなるこれらの新しいアプローチでは、カテーテルや体内留置デバイスなどの治療デバイスの需要が高まっています。これらのデバイスが求めるのは、患部への正確なアクセスと、体内組織との反応性が低いことです。
さらに、治療デバイスの位置を確実に把握するためには、X線による視認性の向上が不可欠です。プラチナや金といった貴金属は、その高い比重によってX線不透過性が高く、また酸化に対する耐性もあるため、医療現場での利用が拡大しています。特に、「Visi FineⓇ」はその特性を最大限に活かし、信頼性の高い素材として展開されます。
高い信頼性を求められる医療機器用素材
医療機器に使用する素材は、極めて高い信頼性が求められます。これは、患者の健康に直接影響を及ぼすためです。そのため、さまざまな種類の加工やカスタマイズが必要です。田中貴金属は長年の経験を活かし、異なる溶解技術や極細線加工、レーザー加工などを用いて、貴金属の特性を最大限に引き出す素材群を提供することに力を入れています。
展示会「MD&M West 2025」への出展
さらに、田中貴金属工業は2025年2月4日から6日まで、アメリカ・カリフォルニア州アナハイムで開催される医療機器関連の展示会「MD&M West 2025」に「Visi FineⓇ」シリーズを初出展します。ここではプラチナ合金ワイヤやレーザー加工品など、最新の技術を駆使した製品が紹介されます。この展示会は国際的な医療機器市場における重要なプラットフォームであり、世界中の業界関係者と情報交換する貴重な機会となります。
田中貴金属の未来に向けたビジョン
1875年からの歴史を持つ田中貴金属工業は、長年にわたり貴金属事業に注力してきました。現在、国内での取扱量もトップクラスを誇り、医療・ヘルスケア分野においても重要な役割を果たしています。2023年度の連結売上高は6,111億円で、5,355人の従業員が在籍しています。こうした背景のもと、田中貴金属は今後も医療機器やヘルスケアの分野において革新を続け、技術の進展をサポートしていくことでしょう。医療における貴金属の価値を高め、より多くの患者に貢献することが期待されています。