1985年8月12日、日航123便は群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落、520名の尊い命が失われた。この悲劇から40年、事故当時、日航の技術担当取締役だった松尾芳郎氏が作成したファイルが、ジャーナリスト・木村良一氏によって世に公開された。
本書『日航・松尾ファイル -日本航空はジャンボ機墜落事故の加害者なのか-』は、松尾氏が長年保管してきた、取り調べの内容や関係資料を基に、事故の真相に迫るノンフィクションだ。
事故の7年前、1978年に発生したしりもち事故で、日航はボーイング社に修理を依頼。しかし、ボーイング社の修理ミスが原因で、7年後に悲劇が起きた。松尾氏は、事故原因とその背景を知る第一人者として、群馬県警の厳しい取り調べを受け、業務上過失致死傷容疑で書類送検された。
本書では、松尾氏が記録していた取り調べの内容や関係資料を公開することで、運輸省航空事故調査委員会が事故調査報告書で誤った情報を流したために、警察・検察が日航に責任を押し付けようとした事実が明らかになる。また、当時の日米関係の中で、ボーイング社を不利益にさせないよう、事故の処理が進められた実態も浮き彫りになる。
松尾氏は、警察と検察の取り調べの中で、日航に過失がないことを繰り返し主張し、ボーイング社の修理ミスの責任を明確に訴えた。しかし、当時の政権は、ボーイング社を不利益にさせないよう、事故調査を意図的に方向づけた可能性が示唆される。
本書では、事故当時に作成された修理指示書の画像や、事故調査報告書の誤りを指摘する資料なども掲載されており、読者自身で事故の真相を検証することができる。
40年近く経った今、再び注目を集める日航ジャンボ機墜落事故。この事故は、日本の航空安全の歴史における大きな教訓であり、航空業界だけでなく、社会全体にとって重要な事件である。本書は、事故の真相だけでなく、組織の責任、そして日米関係の複雑な構造までも深く掘り下げ、読者に多くの示唆を与えてくれるだろう。
日航ジャンボ機墜落事故から40年、封印されていたファイルが公開されたことは、大きな衝撃だった。事故の真相、警察・検察の捜査の矛盾、日米関係の影、そしてボーイング社の責任について、これまで語られることのなかった真実が明らかになった。
松尾氏が長年守り続けてきたファイルの内容は、当時の関係者や機関の責任を改めて問うものだ。事故調査報告書の誤り、警察・検察の偏った捜査、そして日米関係による事故処理の歪みなど、隠蔽されてきた事実が、本書を通して鮮明に浮かび上がってくる。
特に印象的だったのは、ボーイング社の修理ミスに対する責任の曖昧な扱いだ。事故から40年近く経った今でも、ボーイング社はなぜ修理ミスが発生したのか、その原因を明確に説明していない。本書は、事故の真相だけでなく、組織の責任、そして日米関係の複雑な構造までも深く掘り下げ、読者に多くの示唆を与えてくれるだろう。
本書を読み終えた後、私は、日航ジャンボ機墜落事故は単なる事故ではなく、組織の責任、そして国際的な力関係が複雑に絡み合った事件であったことを改めて認識した。この事故は、私たちの社会に多くの教訓を残している。事故の真相を理解し、責任を明確にすることは、安全な社会を築くために不可欠であり、これからもこの事件について深く考え続ける必要があると感じた。