吉田志穂個展「印刷と幽霊」
2024年10月30日(水)、株式会社リクルートホールディングスが運営するBUGで、写真家・吉田志穂の個展「印刷と幽霊」が開催されます。この展覧会は、これまでの彼女のアプローチとは異なり、オフセット印刷技術を駆使した新作の展示を展開します。
吉田志穂は、アナログとデジタルの境界を行き来しながら、その独特な視点で写真作品を制作してきました。これまでの受賞歴には、第11回「1_WALL」グランプリ(2014)や第46回木村伊兵衛写真賞(2020+2021年度)などがあります。本展では、彼女が手作業で行ってきた過程を見直し、印刷機を用いることで創り出す新たな表現が焦点となります。
展覧会のテーマとその意義
展覧会タイトルの「印刷と幽霊」には、吉田が写真を通して感じてきた「ないようである、あるようでない」という感覚が込められています。カメラは肉眼では捉えられない微細なニュアンスや雰囲気を写し取り、観る者に別の視点を与えます。この展覧会で吉田は、印刷機を通じてインキの滲みや機械的エラーを取り入れ、実体がないものの存在を問いかける一連の作品を展開します。これにより、「見えるもの」と「見えないもの」という境界線を探る試みが行われます。
新たなアート表現への挑戦
本展において展示される作品は、すべて新作です。吉田は自身の撮影した何枚かの写真を数千枚に印刷し、これを基にインスタレーションを構築します。印刷技術には「オフセット印刷」が使用され、これにより短時間に大量の印刷が可能となります。印刷物は床に積み上げられたり、無造作に配置されたりし、まるで写真ではないかのような存在感を持つ空間が形成されます。これらの作品は、吉田がこれまでに追求してきた写真表現の枠を超え、独自の実験的要素を取り入れています。
さらに、展示される印刷物には故意に仕込まれたエラーが含まれており、これらがどのように新しい形のアートを生み出すのか、観る者へ強い印象を与えます。印刷機によるエラーは、しばしば単なる事故のようでありながら、意図された表現に置き換えられることで、一つとして同じものは存在しません。これにより、観る者はどのようにその印刷物を受け止めるか、新たな視点を与えられることになります。
トークイベントの開催
展覧会では、吉田志穂自身が参加するトークイベントも計画されています。11月2日には千葉市美術館の森啓輔氏が、11月30日には国立新美術館の小野寺奈津氏が招かれ、展覧会の見どころや吉田の表現に対する思い、作品の背景などについて語ります。これらのイベントは、参加者にとって作品をより深く理解する機会となるでしょう。
BUG Cafeのコラボメニュー
展覧会に併せて、BUGのカフェでは「紫芋のゴーストラテ」が販売されます。これは、展覧会のテーマからインスパイアを受けたドリンクで、優しい甘さが特徴です。訪れる際には、アートだけでなく、カフェメニューでも展覧会の雰囲気を楽しめます。
展覧会の詳細
展覧会の会期は2024年10月30日から12月1日までで、公共交通機関を利用しての来場が勧められています。入場は無料です。吉田志穂の新たな試みを体験しに、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。