日本企業の生成AI導入とその成功のカギを探る対談イベント
次世代AI教育株式会社が主催する対談イベントが開催され、ビジネスAI推進機構の山本力弥氏と同社東京支社長の松元春秋氏が登壇しました。テーマは「AIは思考を拡張する最高のバディ——導入したつもりから抜け出すAIガバナンスと現場教育」です。この対談では、日本企業の生成AI導入率が欧米に比べ低いという現状と、その要因について徹底的に議論されました。
対談開催の背景
生成AI技術が広がる中で、日本では実際にそれを使いこなしている人材はごくわずかで、経営層は過度に期待しがちですが、現場は自己評価にズレが生じているという現実があります。「導入したつもり」という状態が生産性の低下を招いており、多くの企業がPoC(試行)を繰り返すにとどまっています。これに対して、山本氏は企業文化とガバナンスに注目し、AI導入を成功させるためのプロセスを整えることの重要性を指摘しました。
生成AI導入の3つのキーポイント
1. AIは“思考を拡張する最高のバディ”
山本氏は、AIの役割を「人間の仕事を奪う存在」と考えず、むしろ「世界中のベストプラクティスとつながる相棒」として位置づけました。AIは知識の倉庫ではなく、人間の問いかけに応じて思考を拡張する存在です。普段から意味を問い直し、適切な質問を設計する力が求められます。松元氏も、AIを“思いやりの集合体”として扱う視点の重要性を補足しました。
2. 技術より「目的」と「文化」のデザイン
議論の中で、山本氏は技術論に飛びつく前に、ビジネスの目的を明確にし、文化をデザインすることが優先されるべきだと強調しました。これを「ワクワクAIフレームワーク」と名付け、小さく楽しく試して、大きく育てることが重要であると述べました。松元氏も、心理的安全性を重視し、研修が“AIが嫌いな人”を生まない場となることが大切だと指摘しました。
3. AIガバナンスと倫理教育の重要性
対談の後半では、AIガバナンスや倫理教育が経営と現場をつなぐ役割を果たすことに焦点が当てられました。山本氏は、経営層に対してはガイドラインをどのように実行に移すか、現場には実務レベルのルールをどうするのかについて説明しました。彼と松元氏は共通して、AIガバナンスが足かせではなく、成長の基盤となるべきだという見解を示しました。
書籍紹介と今後の研修プログラム
対談の中心テーマである山本氏の著書『はじめてでも失敗しない生成AI導入』は、AI導入の実践的なガイドであり、チェックリストや事例に基づいてプロセスを解説しています。この書籍を通じて、企業が現場でのAI活用を円滑に進めるためのプログラムが展開されることが期待されます。
次世代AI教育株式会社は今後、AIガバナンスや生成AI活用をテーマにした研修を強化し、経営層向けや現場向けの内容をカスタマイズして提供していきます。最新のAI技術を企業文化に溶け込ませることで、より生産的な業務環境の構築に貢献したい考えです。