新たな医療アプローチ「ハカルテリサーチ」
株式会社DUMSCOは、京都大学との共同研究を通じて開発した臨床研究用アプリ「ハカルテリサーチ」を発表しました。このアプリは、婦人科がん患者の化学療法中における生活の質(QOL)を評価するために設計されています。
研究の背景と重要性
婦人科がんの化学療法を受ける患者は、体力的な症状だけでなく、疲労や不眠、抑鬱といった精神的な問題にも直面しています。これらの有害事象は患者のQOLに大きな影響を及ぼすことが、京都大学の予備研究で示されています。重度の疲労やQOLの低下は、治療の中止を引き起こし、さらには予後にも影響を及ぼす可能性があります。
従来、患者が数十問の質問に回答するプロセス(PRO)が利用されてきましたが、これには患者にとっての大きな負担が伴いました。そのため、海外では電子患者報告アウトカム(ePRO)が導入され、医師と患者のコミュニケーションを改善する努力が行われています。しかし、ePROにも継続性や実施頻度の課題が残っています。これらの問題点を解消するために、心拍変動に着目した研究が始まりました。
心拍変動による新しいアプローチ
心拍変動は、自律神経の変化を反映し、疲労や抑鬱、不眠と関連していることが知られています。「ハカルテリサーチ」を使用すれば、スマートフォンのカメラを用いて、簡単かつ迅速に心拍変動の測定が可能です。1日1回、わずか1分で行えるこの方法により、患者の負担を軽減し、より正確なデータ収集が期待されます。
従来のQOL評価方法の限界を克服し、有害事象を早期に検出することがこのアプリの大きな目的です。患者自身が体調を記録し、医療チームと連携を取りやすくなることで、治療効果の向上が期待されます。
研究の概要
本研究は、初発の婦人科がん患者を対象に、化学療法中の有害事象を心拍変動の変化を通じて把握することを目指しています。具体的には、アプリを通じて得られたデータを、採血や画像検査、治療成績などの臨床情報と関連付けて解析し、患者のQOLにとって重要な指標を明らかにしていきます。
研究の詳細
- - 臨床研究名: 婦人科がん患者に対する化学療法中の疲労を主としたQOL指標測定アルゴリズムの開発
- - 研究代表者: 京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学 万代昌紀教授
- - 総研究期間: 約3年間
- - 目標症例数: 約310名
- 初発210例(頸がん、体がん、卵巣がん各70例ずつ)
- 再発100例
- - 実施機関: 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)参加施設
「ハカルテ」アプリについて
DUMSCOは、「ハカルテリサーチ」の開発から得た知見をもとに、一般のがん患者向けに改修した「ハカルテ」を提供しています。このアプリは、がん患者が自身の体調を記録し、主体的に治療やケアに取り組むための支援をおこないます。利用者は、心拍変動の測定や詳細な体調記録ができるほか、今後は医療者へ相談できる機能なども追加予定です。
さらに、がん患者向けのアピアランスケアに関する情報提供を行い、より多くの患者をサポートできる方向へ進んでいます。
詳細に関しては、以下のリンクをご確認ください。
DUMSCOについて
「持続可能なパフォーマンスをデザインする」というミッションの下、データ分析やテクノロジーを用いたサービス開発を行なっています。アプリ開発だけではなく、さまざまな事業を展開し、人々の生活の質を向上させるために取り組んでいます。