GLP-1受容体作動薬の効果
2025-09-18 15:05:07

GLP-1受容体作動薬の食行動変化と個別化治療の可能性

GLP-1受容体作動薬の食行動変化と個別化治療の可能性



近年、2型糖尿病や肥満症の治療において注目が集まるGLP-1受容体作動薬。この薬は、食欲を抑え、血糖値の管理を助けることから多くの患者に利用されていますが、どのように患者の食行動に影響を与えるのかは明らかにされていませんでした。岐阜大学をはじめとする研究チームは、この薬の効果の違いが「食行動のクセ」によるものであることを明らかにするため、前向き観察研究を行いました。

研究の背景



GLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促進し、食欲を抑える効果がありますが、患者ごとにその効果には個人差があります。その違いを解明するために、研究チームは食行動、特に「外発的摂食行動」「情動的摂食行動」「抑制的摂食行動」の3つのタイプに注目しました。これまでに、食行動がどのようにこれらの治療効果に影響を与えているかは充分に研究されていませんでした。

研究の方法



岐阜大学医学部附属病院やその他3つの病院の協力を得て、GLP-1受容体作動薬を使用する2型糖尿病患者を対象にした前向き観察研究が行われました。「日本語版オランダ摂食行動質問票(DEBQ-J)」を使用して、研究参加者の食行動のクセを評価しました。研究は1年間にわたり、HbA1c値や体重、体脂肪率の変化を測定し、食行動との関連性を調査しました。

研究成果とその意義



研究の結果、1年間のGLP-1受容体作動薬治療後、HbA1cおよび体重が共に有意に改善しました。特に「外発的摂食行動」に基づく食行動が長期にわたって抑制されることが明らかになりました。このタイプの食行動が強い患者ほど、治療後に体重の減少幅や血糖の改善効果も大きいことが確認されました。その一方で、感情の変化による「情動的摂食行動」は長期的な改善が難しい可能性が示されました。

これらの結果は、個々の患者にあった治療法を選択する上で非常に重要な情報を提供します。「外発的摂食行動」の傾向が強い患者に対しては、GLP-1受容体作動薬の治療がより効果的であるため、治療開始前に食行動の評価を行うことが有用です。これにより、患者の状況に応じたより個別化された治療の実現が期待されます。

今後の展望



研究は「観察研究」であり、因果関係の解明には更なるデータの蓄積が必要です。今後は多くの患者データを集め、より詳細な分析を行うことで、食行動とGLP-1受容体作動薬の効果との関係を深く掘り下げていく予定です。また、新たに開発されつつある薬剤の効果についても、患者の個性に応じた治療法を探ることで、さらなる個別化医療の実現が目指されます。

この研究成果は日本時間2025年9月17日に国際学術誌「Frontiers in Clinical Diabetes and Healthcare」にて発表され、多くの研究者や医療従事者に新たな視点を提供することでしょう。今後の研究に期待がかかります。


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