地盤の安定性を向上させるAI技術の新たな展開
東京都に位置する芝浦工業大学の稲積真哉教授(地盤工学研究室)は、人工ニューラルネットワーク(ANN)やバギング法を活用した機械学習モデルによる地盤強度予測システムを発表しました。この革新的なシステムは、地盤の支持層の深さに関する予測精度を従来よりも20%向上させ、特に地震が多発する地域での都市開発において重要な役割を果たすことが期待されています。
研究背景:液状化リスクとその対策
日本は地震が頻発するため、都市開発において地盤の安定性を正確に把握することが極めて重要です。過去の地震では、液状化現象により多くの家屋が被害を受け、その影響を最小限に抑えるためには、土壌の状態を詳細に評価する必要があります。しかし従来の手動試験では、すべての土地を均一に評価することが難しく、そのための新たな方法が模索されていました。
研究の詳細:機械学習モデルの開発
今回の研究では、東京都世田谷区内の433地点から集めた地盤データを基にした地盤強度予測システムを構築しました。収集したデータには、標準貫入試験とミニラムサウンディング試験で得た土地の密度や基礎条件に関する情報が含まれています。これらの情報を基に、AIを用いて支持層の厚さと深度を高精度で予測します。
加えて、予測精度をさらに向上させるために、予測モデルにバギング法を適用。複数のモデルが協力し合い、より信頼性のある結果を導くアプローチが功を奏し、従来からの精度が大幅に向上しました。これにより、液状化のリスクが高い地域を特定し、適切なリスク評価が可能となります。
スマートシティの実現へ向けた新たな一歩
この研究成果を通して、芝浦工業大学は災害に強い都市の実現を目指しています。新たに作成された3次元マップにより、安定した建設地を効果的に特定できるようになります。このマップは視覚的に土地の状態を把握できるため、より具体的な都市開発の戦略立案が可能となります。
未来展望:さらなる精度向上に向けて
今後の研究では、地下水の影響を考慮したモデルの開発を進め、地盤条件をより詳細に分析する計画です。また、沿岸部と非沿岸部に適した予測モデルを検討することで、さらなる精度向上を目指します。
このような先端技術の導入によって、安全で効率的なインフラ整備が行われ、市民の生活の安定性を高めることが期待されています。地盤工学におけるAI技術の可能性は、まさに無限大です。今後の研究成果に注目が集まります。
参考文献
本研究成果に関する詳細は、2024年10月8日付の学術誌「Smart Cities」に掲載されています。
芝浦工業大学について
芝浦工業大学は、東京都と埼玉県にキャンパスを有し、国内外で高い評価を受けている理工系の教育機関です。多様な研究活動や教育プログラムを通じて、未来を担う技術者の育成に寄与しています。