江崎グリコが発見した短鎖脂肪酸と認知機能改善の新たな関係
江崎グリコ株式会社が行った最新の研究によって、独自のビフィズス菌株GCL2505(Bifidobacterium animalis subsp. lactis GCL2505)と水溶性食物繊維であるイヌリンの組み合わせが、腸内の短鎖脂肪酸産生菌を増加させ、さらには炎症の緩和に寄与することが明らかになりました。この研究成果は、腸内細菌学会の英文誌「Bioscience of Microbiota, Food and Health」に掲載され、2025年12月4日にオンラインで発表される予定です。
研究背景
我々の生活の中で、認知症はますます深刻な問題となっています。病気による日常生活への影響は甚大で、将来的にその発生率が増加することが予測されています。この問題に対する解決策が求められる中、江崎グリコはヒト試験を通じて、GCL2505株とイヌリンが認知機能改善において重要な役割を果たすことを確認しました。しかし、具体的なメカニズムはこれまで解明されていませんでした。
研究のポイント
GCL2505株とイヌリンを摂取することで腸内のビフィズス菌が増加し、さらに酪酸菌や酢酸を産生するバクテロイデス属など他の短鎖脂肪酸産生菌の増加が見られました。そして、腸内の炎症マーカーの減少が確認され、炎症反応が抑えられることで認知機能が改善される可能性が示されました。これにより、GCL2505株とイヌリンが腸内フローラに好影響を及ぼすことが浮き彫りになりました。
短鎖脂肪酸とは?
短鎖脂肪酸(SCFA)は腸内細菌が食物繊維を発酵させて生成する物質で、酢酸、プロピオン酸、酪酸がその代表的な物質です。短鎖脂肪酸は腸内の健康だけでなく、全身の代謝にも重要な役割を果たします。今年の研究では、これらの成分が肥満や生活習慣病、免疫機能、さらにはストレスや認知機能に関与していることが明らかになっています。このようなことから、短鎖脂肪酸の重要性が再認識されています。
具体的な研究結果
GCL2505株とイヌリンを摂取した被験者の糞便検体を解析したところ、ビフィズス菌だけでなく、短鎖脂肪酸を生成するフィーカリバクテリウムやバクテロイデスが増加していることがわかりました。また、改善が見られた被験者群では、炎症マーカーの発現量が低下しているという結果も得られています。このデータから、短鎖脂肪酸を介する可能性が示唆されています。
結論
今回の研究は、GCL2505株とイヌリンが腸内環境を整えることで、認知機能改善に寄与することを示し、腸内の健康が全体的な健康に及ぼす影響を強調しています。さらに、これらの成果は江崎グリコの「タンサⓇ脂肪酸プロジェクト」にもつながり、健康寿命の延伸を目指す取り組みの一環として位置づけられています。
我々は、日常的にGCL2505株とイヌリンを摂取することで、腸内における短鎖脂肪酸の生成を促し、肥満の予防や生活の質の向上に寄与できる可能性があると考えています。また、今後もGCL2505株と短鎮脂肪酸の研究を続けていく中で、健康に関する新たな知見を提供することを目指します。