医療機関向けクラウドファンディングが200件を突破し新たな支援の形に

医療機関向けクラウドファンディングの現状と展望

READYFOR株式会社が運営する日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR」において、医療機関が行うプロジェクトの公開件数が200件に達しました。この現象は、医療分野におけるクラウドファンディングの利用が広がっていることを示すものです。特に、2024年には医療機関が公開したプロジェクトの支援総額が前年と比べて1.4倍に達し、累計支援額は約30億円となっています。

医療機関のクラウドファンディングの実績

医療機関を対象にしたクラウドファンディングは、2015年に初めて公開されました。当初は年間数件のプロジェクトが公開され、数千万円の支援が集まるという状況でした。しかし、2021年のコロナ禍により医療従事者への支援が高まる中、年間の支援総額が3億円を超えました。

2024年には、医療機関によるプロジェクトの内容が多様化し、51件が公開され、約9億2,500万円の支援が集まりました。この傾向は、医療従事者や地域住民が「地域の医療を支える」という考え方を持つようになった結果とも言えます。支援は、診療報酬だけでは賄えない設備投資や災害対策を補うための寄付として定着しつつあります。

プロジェクトのテーマの変化

2024年のプロジェクトでは、主に医療機器の購入が多く見られました。特に、診断系（MRIなど）や治療系（手術支援ロボットなど）の医療機器の購入が目立ちます。また、救急車やドクターカーの購入・更新に関するプロジェクトも増加しており、地域住民が地域医療を支える動きが強まっています。

さらに、待合室や病棟のリニューアルといった「患者体験価値の向上」を重要視するプロジェクトも増加しています。このように医療機関が抱える課題は多様化しており、それに対する寄付者の共感が広がりつつあります。

注目のプロジェクト

特筆すべきは、2024年の元日に、石川県七尾市の恵寿総合病院によるプロジェクトが1億円を超える支援を集めたことです。このプロジェクトは「能登半島地震災害でも医療を止めない！けいじゅヘルスケアシステム」という名称で、支援者数は2,496人を超え、支援総額は約1億954万747円を記録しました。この金額は、医療機関関連プロジェクトでの最高額を更新しました。

医療機関が直面する課題

最近の医療機関の経営環境は厳しい状況にあります。エネルギー費や物価、人件費の高騰に伴い、医療機関の運営が難しくなる中で、2025年問題に対応するためのさまざまな新たな挑戦が求められています。特に、最新の医療機器の導入や、救急搬送体制の強化といったニーズに対応するための資金が不足している医療機関が多く見られます。

このような背景から、クラウドファンディングは新たな資金調達の選択肢として注目されています。実際に、留萌市立病院の「留萌の命と健康を守り続ける！心臓カテーテルシステムの更新にご支援を」など、クラウドファンディングを通じて支援を募る病院が増加しているのです。

地域の医療と地域住民の関係

クラウドファンディングは、医療機関が地域住民との対話の場として活用することも可能です。新病院の開院や機能の転換時に、地域に対する広報活動の一環として、想いや未来ビジョンを発信することで、地域との新たな関係性を構築するための手段としても注目されています。

たとえば、聖マリアンナ医科大学病院が行う病院リニューアルプロジェクトは、その資金集めだけでなく、地域住民との関係作りにも焦点を当てています。このように、クラウドファンディングは研ぎ澄まされた意義を持つ資金調達の手法となりつつあります。

まとめ

READYFOR株式会社の医療部門責任者である多田絵梨香氏は、医療機関のクラウドファンディングの件数が100件を超えてから、わずか一年で倍増したことを受け、医療機関の寄付に対する関心が高まっていることを実感しています。彼女は、新しい寄付文化の醸成と、地域の医療を皆で支える取り組みを進めていく意向を示しています。診療報酬が依然として主な財源である中で、社会保障費の予算制約や運営コストの増加の中で、新たな挑戦を求め続ける医療関係者の努力に期待が寄せられています。