新刊『戦前日本の「聖地」ツーリズムキリスト・日蓮・皇室』の深層に迫る
5月26日に発売されたNHKブックス『戦前日本の「聖地」ツーリズムキリスト・日蓮・皇室』。著者は、日本近現代史の専門家・平山昇氏です。この本は、昭和戦前期の日本における「聖地巡礼」文化の特殊な側面を探求しており、現代の聖地巡礼とどう違うのかを解説しています。
「聖地」とは何か
今日の聖地巡礼は、宗教的な目的だけでなく、アニメや漫画の影響もあり、個人の趣味に基づいた自由な行動として受け入れられています。しかし、この本は、かつての「聖地」がどのような社会的圧力の中で形成されたのかに焦点を当てています。特に明治時代における社寺参拝の新しい価値観の創出について、日蓮をキリストと同一視する思想がどのように広がったかを探ります。
大衆化の背景
平山氏は、全国的な鉄道網の発展が「聖地巡礼」を大衆化した要因の一つであると指摘します。鉄道の普及によって、多くの人が手軽に聖地を訪れることができるようになり、その結果、観光としての側面が強化されました。しかし、この変化は同時に、社会における同調圧力を強めることにも寄与しました。強い圧力が働く中で、巡礼行為は単なる旅行ではなく、国民的なアイデンティティの象徴ともなっていったのです。
本書の構成について
『戦前日本の「聖地」ツーリズム』は、以下の章立てで構成されています。これにより、著者は歴史的背景から現代に至るまでの流れを丁寧に描き出しています。
- - 序章: 聖地の日本化
- - 第一章: 「日蓮と基督」
- - 第二章: 教養主義と日蓮ツーリズム
- - 第三章: 天皇崇敬の「宗教」化
- - 第四章: 明治神宮と渋沢栄一
- - 第五章: 大正期以降の参拝ツーリズム
- - 第六章: 日蓮の「聖地」と明治神宮
- - 第七章: 「聖地」のセット化(Ⅰ)
- - 第八章: 「聖地」のセット化(Ⅱ)
- - 第九章: 「聖地」のセット化(Ⅲ)
- - 第一〇章: 総力戦体制と「聖地」ツーリズム
- - 終章: キリスト発、日蓮経由、皇室ゆき
本書では、歴史的出来事や社会情勢がどのように「聖地巡礼」を形成し、変化させていったのかを詳細に考察しています。特に、国民教育の観点からの聖地巡礼の意味合いについては、興味深い示唆が得られるでしょう。
著者について
著者の平山昇氏は、日本近現代史に精通し、東京大学にて学位を取得。多くの著書や論文を執筆し、日本の歴史を多角的に分析することで知られています。今作も、彼自身の専門性を生かした貴重な作品です。
この新刊は、戦前の日本における「聖地巡礼」の様相を知りたい方にとって、必読の書となることでしょう。「聖地」を巡る旅の背後にある歴史や社会的背景に興味がある方には、非常に有用な情報が詰まっています。
商品情報
- - タイトル: 『戦前日本の「聖地」ツーリズムキリスト・日蓮・皇室』
- - 著者: 平山 昇
- - 発売日: 2025年5月26日
- - 定価: 1,980円(税込)
- - ページ数: 352ページ
- - ISBN: 978-4-14-091294-2
この本は、NHK出版から発売されており、オンラインでも購入可能です。興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。