文京学院大学と髙島屋が共同で地域産業活性化を目指す
2025年、文京学院大学と株式会社髙島屋は「ヒト×AIの共生による地域産業活性化プロジェクト」を発足させることを発表しました。このプロジェクトは、伝統工芸の代表ともいえる江戸小紋の継承と発展を目指し、AI技術の活用によって新たな道を切り開くことを目的としています。
背景と目的
江戸小紋は、独特な図案と色使いで知られる伝統的な染物ですが、その魅力を次世代へとつなげるためには、数々の課題を克服する必要があります。このプロジェクトは、文京学院大学経営学部のデザインの経営史研究ゼミがきっかけとなりました。ゼミでは、江戸小紋の古い作品を分析し、図案制作理論を体系化することに成功。さらに、ランダム配置という制作上の課題を解決する独自のアルゴリズムを開発しました。その結果、職人が膨大な時間をかけていた作業工程を大幅に効率化し、2024年には新作江戸小紋「スイーツ尽くし小紋」を発表することができました。
AIの活用
本プロジェクトでは、2025年までにモチーフ点描化AIシステムを構築し、江戸小紋制作における職人技術の継承を目指します。従来の技術をデータサイエンスとデザイン思考で分析し、その結果を実証することで、伝統工芸の産業の活性化を図ります。AIは「職人の仕事を奪うもの」ではなく、むしろ「支えるもの」として位置付けられています。この新たな取り組みにより、江戸小紋の美しさと技術が次世代へと継承されることが期待されます。
髙島屋の姿勢
株式会社髙島屋では、このプロジェクトの理念に賛同し、地域の活性化に貢献するために協力しています。特に、着物の商品開発においては、新入社員や着物販売経験の少ないメンバーも参加し、「買いたい」「着たい」という立場から新しい視点を取り入れています。業界課題の一つであるデザインのマンネリ化を打破し、遊び心を生かした商品を提案することを目指しています。
現在の江戸小紋市場
しかし、現状の江戸小紋市場には厳しい現実が控えています。「けれんもの」と呼ばれるデザイン様式は新作がほとんど登場しなくなり、熟練職人の減少が大きな問題です。制作工程は分業制で成り立っていますが、熟練した図案家や職人が少なくなっており、従来の図案の再制作が中心となってしまっているのです。このような状況が続く中で、本プロジェクトは新たな活力を与え、地域産業の復興を目指しています。
まとめ
文京学院大学と髙島屋が立ち上げたこのプロジェクトは、ヒトとAIの協力によって、伝統工芸の価値を再認識し、次世代へとつなげていく重要な試みです。江戸小紋のような素晴らしい伝統が未来に残るために、今後の展開が注目されます。