トラック輸送業界の現状と今後の展望
2024年4月から施行される時間外労働の上限規制により、トラック輸送業界における「2024年問題」がいよいよ現実味を帯びてきました。この問題により、供給能力やサービスの低下が懸念されており、業界内では既に多くの課題が浮上しています。本記事では、帝国データバンクが実施した調査結果を基に、トラック輸送業界の現状について詳しく見ていきます。
2024年問題の概要
「2024年問題」とは、建設業、運輸業、医療業を含む様々な業種で、時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる人手不足や輸送能力の低下を指します。この影響により、モノが運べなくなるという事態が強く懸念されています。今年の調査によると、トラック輸送業界では2019年度と比較し、2024年度には輸送力が14.2%不足する見込みです。
現状を示す指標
最新のTDB景気動向調査によれば、トラック輸送事業者の景況感を示す「景気DI」は44.1となっており、全産業の平均である44.4をわずかに下回る結果となりました。この数値は50を基準にしており、50未満は「悪い」という評価となります。また、仕入単価DIは69.5、雇用過不足DIは66.5というデータも示す通り、燃料費の高止まりと人手不足が業界の足かせになっていることが明らかです。
輸送量は前年同水準を維持
興味深いのは、2024年4~8月の輸送量が前年同期と同水準を維持している点です。輸送量は計10.5億トンで、前年同期の10.3億トンに対して2.0%の増加を示しています。特に、大手3社の宅配貨物においても、前年同期比で1.3%増加していることから、業界全体が輸送効率の向上に努めていることが伺えます。
効率的なシステムへの移行
多くのトラック輸送事業者が効率的な配送を実現するために、パレット輸送や中継輸送、車両の大型化、共同配送といった取り組みを行っています。これに加えて、適正な運賃の設定についても荷主の理解を得る努力が進み、徐々に成果を上げているとの声もあります。これらの取り組みが功を奏した結果、輸送量が前年同水準を維持することができています。
未来への課題
とはいえ、依然として業界は厳しい状況に置かれています。燃料の高騰や深刻な人手不足は、業務運営に大きな影響を及ぼします。これに対処するためには、さらなる輸送効率の向上や自動化の推進が求められています。トラック運送事業者や荷主企業が連携し、安定した物流機能の確保に向けて努力し続ける必要があります。
まとめ
2024年問題は、トラック輸送業界にとって避けて通れない課題です。しかし、業界内での適応策や取り組みが進んでいることから、完全な輸送能力の低下を避けることができているのが現状です。今後も更なる努力が必要ですが、現時点ではある程度の希望が見えています。