アセアン家族の進化:伝統と新興価値の融合
博報堂生活総合研究所アセアンは、アセアン6か国を対象とした調査「アセアン生活者研究2024」を実施し、その結果を発表しました。10年前の調査では、「Connected Family」と名付けられたアセアン家族は、テクノロジーの発展により、常にオンラインでつながりながらリアルタイムでコミュニケーションを楽しんでいました。
しかし、10年を経た今、アセアン家族は大きく変化を遂げ、「Weaving Family」へと進化を遂げていることが明らかになりました。
家族ファーストは揺るぎない
「家族ファースト」という価値観は、アセアン社会において依然として根強く、調査結果でもその傾向が見て取れます。家族の重要性について質問したところ、日本と比べて30ポイント近く高い割合で「重要性が増す」と回答したことが明らかになりました。
グローバルな価値観を取り入れるアセアン家族
アセアン家族は、グローバルな情報や価値観に触れることで、新たな価値観を積極的に受け入れています。その一つとして、キャリア意識の向上があげられます。
10年前と比べて、「なりたい男性像/女性像」として「キャリアでの成功を目指す」と回答した割合が、男女ともに10ポイント以上上昇しました。また、「家族の時間を犠牲にしてでもキャリアで成功したい」と考える人も増加しています。
一方、家族のサイズは「拡張」から「凝縮」へと変化しています。今後「子供の数が減る」「同居家族の人数が減る」と答えた人は6割以上にのぼり、家族の形態は変化しつつあることがわかります。
さらに、個の自由への意識も高まっています。10年前と比べて、「一人で過ごす時間を増やしたい」「自由がほしい」という願望を持つ人が増加しており、家族の中で個人の時間を大切にする意識が高まっていることがわかります。
伝統価値を再評価する
アセアン家族は、新しい価値観を受け入れながらも、伝統的な価値観も大切にしています。
例えば、家族内のパワーバランスにおいては、日本と比べて夫の権限が強い傾向が見られます。これは、家族内のヒエラルキーを明確にすることで、秩序や助け合いの関係を維持してきた伝統的な価値観が反映されていると考えられます。
また、「家族ファースト」は社会的信頼のベースとして機能しています。「家族との関係が良好な人は、『良い人』である可能性が高いと思う」と回答した人は約7割に達しました。これは、家族が社会的な信用を得る上で重要な役割を果たしていることを示しています。
変化し続けるアセアン家族
アセアン家族は、グローバルな価値観を取り入れながら、伝統的な価値観を再評価することで、独自の価値観を形成しています。これは、不安定さを抱えるアセアン社会の中で、家族を支え、守るための柔軟な対応と言えるでしょう。
今回の調査を通じて、アセアン家族が「Connected Family」から「Weaving Family」へと進化し、新たな強靭さを獲得していることが明らかになりました。今後もアセアン家族は、変化を続ける社会の中で、伝統と新興価値をバランス良く織り交ぜながら、独自の道を歩んでいくでしょう。