地域活性化と再生可能エネルギーの融合を目指す「e.CYCLE」事業の挑戦
再生可能エネルギーの重要性が叫ばれる中、地域活性化を目指した新たな取り組みがある。それが、株式会社まち未来製作所が茨城県神栖市と共同で推進している「e.CYCLE(いいサイクル)」事業だ。この取り組みは、再エネの地産地消だけでなく、地域住民との共生を意識したものとして注目を集めている。
「e.CYCLE」とは
「e.CYCLE」とは、再生可能エネルギーに関わる産業界、自治体、消費者を結びつけるアグリゲーションプラットフォームである。特に、地域で発電したエネルギーを消費者に届けることで、地元経済の強化を図ると同時に、環境負荷の低減にも寄与することを目指している。このプラットフォームの最大の特長は、電力取引から得た利益の一部を地域活性化の資金として活用することだ。このことにより、再エネ導入の課題とされる地域との共生を実現している。
神栖市との連携
まち未来製作所は2021年に神栖市と連携協定を結び、「いいサイクル神栖」を発足。現在、風力や太陽光、バイオマスなど、さまざまな再エネ源の地産地消に取り組んでおり、地域間での電力流通を促進している。その成果が評価され、2023年度には経済産業省・資源エネルギー庁による「地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰」として表彰されるなど、非常に高く評価されている。
2024年6月26日に行われた成果報告会では、神栖市の石田市長が「e.CYCLE」事業に参加する発電所や小売電気事業者に感謝の意を表し、表彰状や記念品を贈呈した。これにより、地域の再エネ事業者たちは一層の士気を高め、地域のための取り組みを進めることが期待されている。
地域活性化への貢献
「いいサイクル神栖」については、神栖市の地域活性化制度「かみすポイント事業」を利用し、地域社会に貢献する活動を展開している。この資金を使って、転入親子ウェルカムツアーや育児応援イベント、地域ボランティア活動などが実施されており、地域コミュニティの強化に貢献している。また、2023年度には約240万円を地域に還元し、避難施設であるうずもコミュニティセンターに蓄電池を導入する予定だ。「e.CYCLE」は、今後さらなる発電所の参加を見込み、2024年度には3,000万円〜4,000万円程度の地域活性化原資の創出が期待されている。
今後も、まち未来製作所と神栖市は「いいサイクル神栖」の好循環を拡大し、地域住民との共生を進めていく意向だ。再生可能エネルギーが地域社会にどのように根付いていくのか、その動向が注目される。
まち未来製作所のビジョン
まち未来製作所の目的は、地域の再生可能エネルギーを活用して、地域の活力を引き出すことだ。現在、全国の再エネ流通のわずか0.1%が「e.CYCLE」から流通しているが、将来的にはその割合を35%まで引き上げ、より持続可能なエコシステムを作り上げることを目指している。地域活性化と再生可能エネルギーの融合は、未来の地域づくりにおいて重要な要素となるだろう。