日本には、古くから特有の犬種が存在しています。柴犬や北海道犬、秋田犬、甲斐犬、四国犬、紀州犬、琉球犬など、それぞれが自らの故郷を持ち、猟犬としての歴史を背負っています。これらの犬たちは、明治時代に洋犬が持ち込まれて以降、交雑が進む中でその純粋な血統を守るための保存活動も続けられてきました。
このような背景のもと、日本の犬たちがどのように育まれてきたのか、その本来の姿を知るために、各犬種の故郷を訪れた著者たちの旅が展開します。日本犬の特徴やスタンダードを明らかにするため、当時活躍した犬たちの膨大な資料を掲載し、豊かなビジュアルで読みやすくまとめています。
本書の魅力は、何と言ってもそのビジュアルです。全ページオールカラーで、これまで見たことのない貴重な写真や情報が詰まっています。読者は、可愛らしい外見だけでなく、日本犬が持つ独特の気質や能力についても詳しく学ぶことができます。
著者である武井哲史氏と山喜多佐知子氏は、犬に対する深い愛情と知識を持ち、犬の写真撮影や取材を通して、犬の魅力を伝える活動を続けてきました。彼らが取り組んだ本作では、ただの犬種ガイドブックではなく、日本犬に関する歴史や文化、そして著名な人物たちの逸話も織り交ぜられています。たとえば、忠犬ハチ公の物語や江戸時代の犬公方・徳川綱吉に関するエピソードなども紹介され、読み物としても楽しめる内容に仕上がっています。
日本犬のルーツについても、DNA解析の進展により従来の認識が大きく変わりつつあります。縄文犬や弥生犬といった歴史的な観点から、日本犬が持つ原始的な特性についての解説も充実しています。これを知ることで、愛犬との共生をより深く理解する手助けとなるのです。
著者プロフィールにも触れましょう。武井哲史氏は1948年生まれで、2歳から犬と共に生活をしてきた経験を有し、数々の犬に関する書籍を手がけてきました。一方で山喜多佐知子氏は、犬に対する理解を深めたままに、彼女自身のデザインと編集のスキルを活かし、数々のメディアで犬に関する企画を手掛けてきました。二人のコラボレートから生まれた本書は、犬好きにとって必見の資料と言えるでしょう。
『日本の犬』は、日本犬を深く理解し、その魅力を探求するための文献です。ぜひ手に取り、犬たちの美しさや個性を感じながら、彼らの歴史や文化を同時に楽しんでください。愛犬と過ごす日々が、より一層特別なものになることでしょう。
本書は2024年11月6日(水)に発売予定で、定価は5,500円(税込)です。購入は誠文堂新光社のウェブサイトから確認できます。