東京証券取引所ビル本館の耐震バリューアップ工事
東京都中央区に位置する東京証券取引所ビル本館が、この度耐震バリューアップ工事を完了しました。この計画は、平和不動産株式会社、株式会社三菱地所設計、鹿島建設株式会社の共同作業によるもので、ビルの安全性と利用者の安心を一層高めることを目的としています。
耐震バリューアップの必要性
東京証券取引所ビルは1988年に竣工して以来、安全性の高い超高層ビルとして評価されてきましたが、近年の地震活動の増加や、BCP(事業継続計画)の重要性が高まる中、さらなる耐震性能の向上が求められていました。そのため、今回の工事では、ビル屋上にTMD(Tuned Mass Damper)型の制震装置「D³SKY®-L」を設置することが決定されました。
新しい制震技術「D³SKY®-L」とは
「D³SKY®-L」は、長周期地震動から中小地震まで広範囲の地震動に対応できる最新のTMD型制震装置です。この装置は、建物の揺れの幅や揺れを強く感じる時間を大幅に低減することができ、利用者にとっての安全性と快適性を向上させる役割を果たします。実際に東日本大震災の地震動を用いたシミュレーションでは、建物全方向の揺れが半減するとともに、揺れを強く感じる時間を大幅に短縮できることが確認されています。
この工事では、2基の「D³SKY®-L」が設置され、合計800tの重量を持つTMDがビルの耐震性能を最新鋭の超高層ビルと同等レベルまで引き上げました。また、装置は屋上外壁の高さ以下に収めることができたため、地下街や景観にも配慮されています。
プロジェクトの進行と背景
耐震バリューアップ計画は、平和不動産を中心に行われ、三菱地所設計と鹿島建設の専門家によって作成されました。改修設計は、両社の共同企業体が行い、屋上スペースを効率的に活用した制震装置の導入に成功しました。これにより、さらに安全で快適なビル利用が実現されます。
平和不動産は、70年以上の歴史を持ち、都市の発展と安全な建物運営に尽力してきました。今後も新たな技術を積極的に導入し、安心できる空間づくりを進めていく方針です。
三菱地所設計もしかるべき経験を生かし、135年の歴史の中で数多くの超高層ビルの設計に携わってきました。今後は既存ビルのリノベーションやリニューアルに関与し、持続可能な社会づくりに貢献していく予定です。
まとめ
鹿島建設は、1980年代から制震技術の研究開発に取り組んでおり、今回の「D³SKY®-L」はその一環として開発されています。これらの技術の普及を図り、安心で安全な生活環境の提供に尽力する姿勢が伺えます。耐震バリューアップ工事の完了により、東京証券取引所ビルは安心・安全な利用環境を一層強化し、今後の発展に寄与していくことが期待されます。
工事概要
- - 名称: 東京証券取引所ビル本館
- - 所在地: 東京都中央区兜町2番地1号
- - 用途: 事務所
- - 構造: 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)
- - 階数: 地上15階、地下3階、塔屋2階
- - 高さ: 最高78.8m
- - 竣工: 1988年4月
- - 設計: 三菱地所株式会社一級建築士事務所
このプロジェクトが地域の発展と利用者の安心に寄与することを願っています。