三島由紀夫の生誕100年を迎える2025年、東京バレエ団はモーリス・ベジャール振付のバレエ『M』を再演します。この作品は、三島由紀夫という芸術家の人生と作品のエッセンスを凝縮したもので、言葉を用いないバレエを通じて彼の魂を表現しています。1993年に初演され、以来数々の名劇場で上演されたこの作品は、単なるバレエの枠を超えた独創性が光ります。
本作のタイトル『M』は、三島の名を示すだけでなく、海(Mer)、変容(Métamorphose)、死(Mort)、神秘(Mystère)、神話(Mythologie)など、彼の人生を象徴する言葉でもあります。ベジャールは三島の生涯を意識し、彼に捧げる形でこの作品を生み出しました。舞台は、静謐な潮騒を背景に、少年三島を引き連れる老婆の登場から始まります。群舞によって描かれる波の美しさや、力強い男性ダンサーのパフォーマンスが観客を圧倒します。
初演を観た文芸評論家の奥野健男が「三島の魂が生き返る」と評したように、観る者の心に深く響くこと必至の作品です。 東京バレエ団のダンサーたちは、一糸乱れぬ素晴らしい踊りを披露し、特に再演となる今回は公演に向けた情熱の高さを感じさせます。男性ダンサーたちによる“武士道”をテーマにした振付は、三島を象徴する力強さを体現しています。
音楽もまた、本作品の魅力の一つです。黛敏郎によって作曲されたオリジナル楽曲に加え、名曲がアレンジされ、バレエの世界観を一層深めています。公演では、名ピアニストの菊池洋子が伴奏を務め、その演奏はストーリーを引き立てる重要な役割を果たします。彼女の音楽は、急成長する東京バレエ団にとって大きな支えとなることでしょう。
『M』のリハーサルも公開され、ダンサーたちの充実したパフォーマンスが連日繰り広げられています。演出を手掛ける佐野志織芸術監督の指導のもと、全てのダンサーが作品に取り組む姿勢は、三島由紀夫の魅力を現代の観客に届けるための強い意志を感じさせます。
2025年9月の公演は、三島の聖なる性と愛が交差する深いテーマを描いています。歴史に名を刻んだ三島由紀夫の作品を、現代の感性で楽しめる絶好の機会です。『M』は、これからも長きにわたり、多くの人々の心に残り続けることでしょう。本作が新たな観客を魅了する姿を目にできることを楽しみにしています。
公演は東京文化会館で行われ、詳細は公式サイトで告知されています。バレエファンはもちろん、三島由紀夫の文学に興味を持つ方々にとっても、見逃せない催しとなります。ぜひ、この機会に三島の精神を感じるべく、観劇をお勧めします。