2025年のおせち事情
2025年正月に向けたおせち料理の価格が発表され、全国的な調査によると、平均的な価格は2万7826円(税込)となりました。この結果は、昨年の2万7466円と比べると360円、率にして1.3%の値上げです。しかし、この値上げ幅は過去3シーズンの中で最も小さく、消費者の節約志向が反映されています。
調査は株式会社帝国データバンクによって実施され、全国の大手コンビニ、百貨店、スーパー、日本料理店など計110社で販売されている三段重、または3~4人前分のおせち料理を対象に行われました。特に注目すべき点は、全体の60%以上のおせち料理が価格の据え置きか値下げが行われ、これがこの3年間で最も多かったことです。一部の大手量販店では、売れ筋の商品が値下げされるケースも見られました。
一方で、値上げを実施した36社中で、1000円台の値上げにとどまったおせち料理は8社に過ぎず、前年の33社から大幅に減少しました。実際には、1000円未満の値上げのある6社を加えると、約40%のおせちが1000円台以下の値上げにとどまっています。これに加え、百貨店やホテルが扱う高級帯のおせちも価格を据え置く傾向が目立ち、コストパフォーマンスを意識した値付けが進んでいます。
調査の結果、2025年正月に向けては「5000円以上」の価格上昇が見られたおせちが10社になり、過去3シーズンで最多となっています。特に、高級ホテルやレストランで扱われる商品において、顕著な価格引き上げがあり、高価格帯と普及価格帯の二極化が進行しています。
原材料の価格にも変動があり、魚介類やローストビーフの原価が上昇しています。その一方で、数の子や豊漁によるずわいがに、いせえびなどの価格は前年から低下しており、全体的な価格の上昇圧力が緩和される兆しも見られています。特に、鶏卵など化粧箱の材料費は上昇を続けるものの、材料の見直しといった工夫により、24年の価格帯が維持されるケースもあります。
こうした背景には、昨年ごろから続いている物価高の影響が色濃く反映されています。百貨店「松屋」の調査によれば、1449人に対して約9割が例年と同じか増加の予算を考えていることが見て取れますが、その予算額は約2万4000円と調査の平均から3000円ほど下回っています。このように、消費者はおせち料理に対しても品質とコストの釣り合い、さらにはお得感を求める傾向を強めています。
年末年始の帰省需要などでの大人数向けのおせちの予約は好調ですが、低価格品に人気が集まりつつある「値上げ疲れ」の動きもありそうです。この傾向により、今後おせち料理の価格帯別の二極化がさらに進行することが予想されます。
このように、2025年の商品価格の傾向は、節約志向と高級志向が同時に表れる複雑な状況を反映しています。新しい年を迎えるにあたり、各家庭のおせち選びにも影響を与えそうです。