2024年に向けた日本企業の株主利回り順位、BCG調査の結果は

日本企業のTSR動向と将来的な課題

経営コンサルティングファーム・ボストンコンサルティンググループ（BCG）が発表した最新のレポートによれば、2024年までの5年間にわたる日本企業の株主総利回り（TSR）の動向が明らかにされました。年平均TSRは、2020年から2024年にかけて13%と報告され、これは欧州の7%や新興国の6%を上回り、さらには米国の15%に迫る水準に達しています。しかし、この進展の裏には依然として企業が直面するさまざまな課題が存在しています。

日本企業のTSRの背景

BCGの調査によると、日本企業のTSRの成長要因は「利益成長」「マルチプル変化」「フリーキャッシュフロー利回り」という三つに分解されました。残念ながら、マルチプルの大幅な低下が影響し、投資家たちは日本企業の根本的な課題である資本収益性やガバナンスの改善が遅れていることが懸念材料として浮かび上がっています。

業種別のTSRランキング

業種別のTSR分析では、昨年5位にランクインしていた「保険」が首位に躍り出ました。これは金利の上昇が業績を押し上げたこと、さらに株主還元の視点でもポジティブな影響を与えたとされています。また、. 半導体業界も強い利益成長を維持しており、その主な要因は生成AIやデータセンター向けの投資需要から来ていると見受けられます。

価値創造に優れた企業の実績

時価総額が1兆円以上の大企業の中で、特にフジクラが首位に立つなど、次世代の光ファイバー技術「SWR」を駆使し、データセンターへの需要を取り込むことで急成長を遂げました。このように、新たにランクインした企業には、昨年上位20社には入っていなかったフジクラやサンリオ、アシックスなどが名を連ねています。これらの企業は、変化する市場環境に的確に適応していることが伺えます。

中期経営計画の重要性

さらにレポートの後半では、中期経営計画がエクイティストーリーとしての役割を果たす重要性が指摘されています。経済環境の不透明さが増す中、中計がそのままでは通用しないという意見も浮上していますが、中計は今こそ、自社の成長ストーリーを提示し投資家の信頼を得るための有効なツールとしての役割が求められています。

投資家の期待と企業の実態

BCGによると、中計を公表した187社の株価パフォーマンスを分析した結果、株価が上昇した企業は25%、下落した企業も同様に26%を占める一方で、株価が安定した企業は49%に達しました。このデータは、企業の株価が期待外れになるリスクも高いことを示しています。投資家が求めるのは意欲的な業績見通しやキャピタルアロケーションの明確化です。

まとめ

BCGの調査結果は、日本企業が目指すべき方向を明らかにしています。投資家の信頼を獲得し、さらなる価値創造を実現するためには、中期経営計画をエクイティストーリーとしてしっかりと描く必要があります。加来一郎氏の言葉を借りれば、企業は投資家に向けてなぜ自社に投資すべきかを示す魅力的なストーリーを持つことが求められています。