オーディオブックと運動による認知機能の維持に関する研究
近年、高齢者の認知機能低下が大きな社会課題となっている中、東京都に本社を構える株式会社オトバンクは、オーディオブックを活用した新たなアプローチを提供しています。このたび、ベルピアノ病院および関西福祉科学大学との共同研究が『日本早期認知症学会誌』に掲載され、オーディオブックと運動という「二重課題トレーニング」が軽度認知障害(MCI)における認知機能の維持に効果的であることが示されました。
研究の背景
高齢化が進む中、2040年には約3人に1人が認知症またはMCIを抱えると予測されています。このため、認知症予防策には大きな関心が寄せられています。今回は、65歳以上の要支援高齢者を対象に、オーディオブックと運動を合わせた二重課題による介入が行われました。研究では、1年間の長期にわたって二重課題を実施し、運動のみを行う対照群と評価を比較しました。
研究方法
研究では、65歳以上の68名の要支援高齢者を対象に、以下の2つのグループに分かれました。
1.
対照群(複合的運動のみを実施)
- 週2回、理学療法士によるリハビリに加え、バランスエクササイズや有酸素運動、筋力トレーニングの複合的運動プログラムを約90分実施。
2.
二重課題群(運動 + オーディオブックを実施)
- 対照群の運動プログラムに加え、週1回オーディオブックを用いたトレーニングを15〜20分行いました。
このプログラムでは、運動しながらオーディオブックを聴くとともに、聴いた内容を想起するアウトプットも行われました。
実施結果
研究の結果は非常に興味深いものでした。対照群は認知機能スコアが1.25点の低下を示したのに対し、二重課題群は0.79点の改善が見られました。両群間の変化量は2.04点に達し、これは臨床的に重要とされる基準を超えていました。これにより、オーディオブックを聴くことによる知的刺激が認知機能の維持に寄与していることが示されたのです。
また、二重課題群では、プログラムの遵守率が86.1%という高い数値を記録。従来の計算やしりとりなどの定型的な課題では、前提条件として「慣れ」や「飽き」が問題とされていましたが、オーディオブックではその点が軽減されることが確認されました。
研究の意義について
執筆者の中村祐輔氏は、「オーディオブックを利用したトレーニングが1年間の介入にもかかわらず、認知機能低下の抑制に寄与する可能性を示しました。」と述べています。オーディオコンテンツを活用することで、シニア層にとって持続可能な認知症予防策としての可能性が広がります。加えて、日常生活の中で簡単に取り入れられる方法であり、今後の社会実装への期待も高まります。
今後の展望
オーディオブックは、単に「聴く読書」として楽しむだけでなく、健康を促進するツールとしての役割も果たすことが期待されています。将来的には、オーディオブックを通じて、健康寿命の延伸やQOLの向上に貢献できる実践的なプログラムの開発が進むことでしょう。音声コンテンツがもたらす、新たなライフスタイルの提案が今後の高齢者支援に重要な役割を果たすことが期待されています。