金融機関向け耐量子計算機暗号(PQC)への対応
近年、量子コンピュータの進展により、従来の暗号技術は危機にさらされています。この課題に立ち向かうべく、愛知県名古屋市の株式会社Acompanyは、耐量子計算機暗号(PQC)に対応した技術検証を完了しました。この技術は、金融機関が取り扱うデータの機密性と完全性を確保するための重要なステップです。
PQCとは何か?
耐量子計算機暗号(PQC)は、量子コンピュータによる暗号解読のリスクからデータを保護するための新しい暗号技術です。量子コンピュータの性能が向上することで、従来の暗号アルゴリズムは安全でなくなる可能性があります。そのため、金融機関においては新しい暗号の採用が急務とされています。
Acompanyの取り組み
Acompanyは、インテル社製の『Intel® Software Guard Extensions(SGX)』を活用した仮想ハードウェアセキュリティモジュール(仮想HSM)を使用して、PQC対応アルゴリズムを実行できる技術を確立しました。この技術検証により、金融機関が将来的なPQCへの移行を円滑に行うことができる柔軟な設計が可能であることが確認できました。
今回の検証結果は、金融庁が2024年11月に公開した報告書でも提言された「クリプトアジリティの確保」に寄与するものです。クリプトアジリティとは、ソフトウェアシステムが持つ暗号アルゴリズムを大きな影響なく柔軟に切り替えられる能力を指し、金融機関にとって非常に重要な要素です。
実証成果
ここで得られた具体的な成果は以下の通りです。
1.
PQCアルゴリズムの正常動作確認:仮想HSM環境において、PQCアルゴリズムが正常に実行できることが証明されました。これにより、さまざまな暗号アルゴリズムを、ハードウェアの変更を必要とせず動作させる環境が確立されました。
2.
クラウド環境での安全性:リモートアテステーション機能を使うことで、クラウドHSMでの実行環境がセキュリティ要件を満たすものであることを確認しました。
今後の展望
今後、Acompanyは本技術検証の結果を基に、金融機関向けにPQC対応の暗号基盤構築に向けた検証を進めていく予定です。さまざまなPQCアルゴリズムへの対応を進め、実際の運用でのパフォーマンス評価を実施することで、量子時代に耐えうる安全な暗号インフラの実現を目指します。
会社概要
- - 社名:株式会社Acompany
- - 代表者:代表取締役CEO 高橋亮祐
- - 所在地:愛知県名古屋市西区那古野2丁目14番1号なごのキャンパス
- - 設立:2018年6月
- - URL:Acompany公式サイト
- - 事業内容:秘密計算に関連した製品・技術と、機密データ活用に関するコンサルティングサービスの提供
この新たな技術が金融業界に与える影響は大きく、Acompanyの挑戦は今後も注目されることでしょう。